第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。

 本木雅弘(49)が「日本のいちばん長い日」「天空の蜂」の2作品で助演男優賞を初受賞した。米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」(08年)以来、7年ぶりの本格映画出演。先に出演依頼が届いたのは「天空の蜂」だった。主人公と対峙(たいじ)する原発設計士役。「ある意味、悪役だったことが自分の中でも新しかったですね」。

 出演依頼は絶えないが、慎重に判断する。長い時は半年間もかける。しかし、わずか1週間で即決したのが「日本のいちばん長い日」の昭和天皇役だった。重圧もあり、ためらった。「究極的に自分とかけ離れた存在。非現実的な感じが重なり、いい意味で崖っぷちに立たされて飛び降りてしまえ、という気になりました」と振り返る。

 09年から3年間放送されたNHKの大作ドラマ「坂の上の雲」に主演した。7年もの映画キャリアのブランクは、1つの作品に集中したことも大きかった。「役が徐々に染み込む味わい深さを知ったし、抱える日常も忙しい。流されないペースをキープしようと。ある意味、立ち止まる感覚は1つの自信にもなりましたね」という。

 最近は、ロンドンと日本を往復する生活を続けている。「いろいろなことを考え、感じながら公園を歩いたりする生活はささやかですが、すごく重要。生きていることを、より実感します。いろいろな生活をしていないと出せない味わいがありますしね」。

 これまでのキャリアには主演作が並んでおり、日刊スポーツ映画大賞も99年に「双生児」で主演男優賞を獲得した。ところが「自分は石原裕次郎さんやキムタクのようにスターではないから」と恐縮しており、「今回は2作とも助演。最近の自分としては新しい試みでした。特別にうれしいです」。主役も張る本木が、新しい領域にも踏み込み始めた。【近藤由美子】

 ◆本木雅弘(もとき・まさひろ)1965年(昭40)12月21日、埼玉県生まれ。81年TBS系ドラマ「2年B組仙八先生」でデビュー。88年「シブがき隊」解散後、俳優として映画「シコふんじゃった。」などに出演。内田裕也、樹木希林夫妻の長女也哉子と結婚し2男1女がいる。174センチ。血液型A。

 ◆日本のいちばん長い日 太平洋戦争末期、日本は連合国からポツダム宣言受諾を迫られた。鈴木貫太郎首相が阿南惟幾陸相らと閣議を続ける中、広島と長崎に原爆が投下。昭和天皇の聖断を受け、内閣は降伏を決断する。

 ◆天空の蜂 軍用ヘリ「ビッグB」が何者かに強奪された。ヘリには設計者の湯原(江口洋介)の息子が乗っており、爆弾が積まれていた。犯人は国内の全原発を止めなければ、ヘリを原発に墜落させると脅迫。湯原は原発設計士の三島(本木雅弘)と事件解決のため奔走する。堤幸彦監督。

 ◆助演男優賞・選考経過 「人のおどろおどろしさを表現した」(品田英雄氏)綾野剛や、「主演でもいい」(渡辺武信氏)と長谷川博己を推す声もあったが、投票では本木雅弘が過半数を獲得。「天皇陛下を演じるのは勇気がいる。よく勉強された」(林雄一郎氏)など絶賛の声が上がった。