第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。

 高良健吾(28)が初の主演男優賞に輝いた。「悼む人」「きみはいい子」の2作品で、抑えた中にも感情が伝わる演技力を発揮。10年の石原裕次郎新人賞から5年。一回りも二回りも大きくなって帰ってきた。

 石原裕次郎新人賞受賞者で、主演男優賞も手にしたのは過去27回で木村拓哉(43)と岡田准一(35)の2人だけ。20代で両賞を獲得したのは、高良が初めて。「昔から見ていた先輩方と一緒にノミネートされただけでもうれしかったのに、例年以上に自分を変えたいと臨んだ10年目の撮影を評価していただけて、よりうれしいです」。

 5年前の石原裕次郎新人賞は「俺でいいのか、と怖くて、堂々と受け取れなかったんです。賞金100万円だけは、自宅の本棚に隠して、1枚ずつ抜いて生活していましたけど」と笑い話を交えて振り返る。「前は無意識から湧き出すもので演じ、撮影を終えたら忘れていいぐらいに思っていました」。今回の2作品からは、1つ1つを細かく意識して演じるようになった。演技の引き出しを増やしていた。

 選考会では「『悼む人』の喜怒哀楽の少ない主人公を丁寧に演じていた」などの声が上がった。「無表情でも、立ってるだけでも、思いは必ず胸の中にあるので、それらも表現の1つ。伝わるもの、届くものがきっとあると信じていました」。

 年明けから、フジテレビの看板ドラマ枠「月9(ゲツク)」の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(月曜午後9時)に主演する。民放の連続ドラマは「意識的に避けてました」という。番組宣伝に駆け回り、視聴率に振り回され、台本が完成する前に配役が決まることなどに抵抗があった。ただ、いつだって最大の願いは、1人でも多くの人に作品を見てもらうこと。「今回の2作品も、もっと大勢に見てほしかった。そのためには自分の知名度も必要なんですよね。そういう意味で、ドラマもやらなきゃって」。

 30歳を目前に、メーンストリームに飛び込む覚悟が決まった。主演男優賞が何よりの支えになる。【瀬津真也】

 ◆高良健吾(こうら・けんご)1987年(昭62)11月12日、熊本県生まれ。05年に日本テレビ系「ごくせん」でデビュー。映画は06年「ハリヨの夏」以降、数多く出演。10年「おにいちゃんのハナビ」で映画初主演。同年の日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞受賞。12年日本アカデミー賞新人俳優賞、14年「横道世之介」でブルーリボン賞主演男優賞。176センチ。血液型O。

 ◆悼む人 坂築静人(高良健吾)は不慮の死を遂げた人が生前、誰に愛され、誰を愛したかを覚える儀式を行う旅を続けている。道中、山形で奈義倖世(石田ゆり子)と出会う。夫(井浦新)を殺した過去を持つ倖世は、夫の幻影に悩まされながらも静人に引かれていく。堤幸彦監督。

 ◆きみはいい子 新人小学校教師の岡野(高良健吾)は、児童が言うことを聞かず悩んでいる。夫が単身赴任中の雅美(尾野真千子)は娘の言動にいら立ち、暴力が日常化してしまう。子供をめぐる悩みを抱える大人たちが苦しみを共有することによって、新たな1歩を踏み出す。呉美保監督。

 ◆主演男優賞・選考経過 「表情で感情を表せる」(宮崎晃氏)と評された佐藤浩市と、「5年前に石原裕次郎新人賞を取り、今はしっかり抑えた演技ができている」(寺脇研氏)という声の出た高良健吾の一騎打ち。決選投票で高良に軍配が上がった。