英国のロック歌手デビッド・ボウイさんが10日(日本時間11日)、約1年半の闘病の末、がんのため死去した。69歳。長男で映画監督ダンカン・ジョーンズ氏が明かした。派手な衣装や濃いメークの特徴的ファッションとロックを融合させる「グラムロック」の旗手として知られ、世界の音楽界に多大な影響を及ぼした。誕生日の今月8日には最新アルバムを発売。死の直前まで創作活動を続けた。

 音楽界のレジェンドは、家族にみとられ息を引き取った。ジョーンズ氏は「デビッド・ボウイは今日、18カ月の勇敢ながんとの闘病生活の末、家族に囲まれて安らかな眠りについた」とツイッター等に記した。

 1947年1月8日、英国生まれ。幼少からエルビス・プレスリーに感銘を受けた。母から贈られたサックスでバンド活動に目覚め、67年デビュー。69年に映画「2001年宇宙の旅」をモチーフにしたアルバム「スペイス・オディティ」が大ヒットした。

 革命児だった。70年代にはグラムロックの旗手として活躍。ローリング・ストーンズなどにも影響を及ぼした。83年のアルバム「レッツ・ダンス」は世界で700万枚を売り上げた。革新的な音楽に、英BBC(電子版)は「ポップ界のピカソだった」と表現した。

 俳優としても活躍したボウイさんは日本とのつながりも深かった。83年「戦場のメリークリスマス」に主演し、ビートたけしや坂本龍一らと共演。日本のテレビCMにも出演した。ツアーでの来日は2004年の公演まで7度。派手なメークは歌舞伎から着想を得たといい、日本文化を敬い、積極的に取り入れた。キャメロン英首相も「大きな喪失だ」と悼んだ。

 晩年は病に悩まされた。04年に心臓疾患でツアー中止。13年には突然10年ぶりのアルバムを発表し驚かせた。今月8日、69歳の誕生日にアルバム「ブラックスター」を発売したばかり。飽くなき創作意欲も病魔には勝てず、これが遺作となった。同アルバム収録曲「ラザルス」には「見上げてごらん 私は天国にいる」という歌詞があり、ミュージックビデオにはボウイさんが病院のベッドに横たわる場面もある。近い将来の死を暗示するかのような、謎めいた最期だった。