「英国王のスピーチ」(10)でアカデミー賞4部門を受賞した巨匠トム・フーパー。そして、昨年「博士と彼女のセオリー」(15)で英米のアカデミー賞を制覇したエディ・レッドメイン(34)。今最も映画ファンの注目と期待を集めるふたりが「レ・ミゼラブル」に続いてタッグを組み、誕生させたのは、今から80年以上も前に世界で初めて性別適合手術を受けたデンマーク人リリー・エルベの実話に基づく勇気と愛の物語。「リリーのすべて」(3月18日日本公開)は、命の危険を冒してでも自分らしく生きることを望んだ主人公と、その一番の理解者であり続けた妻が織りなす魂の触れ合いのドラマを、心揺さぶる演技と演出でつづりあげた感動作だ。

 アイナー・ヴェイナーの心の中で生まれ、やがてひとりの女性としての人生を獲得していくリリー・エルベを演じるのは、エディ・レッドメイン。その妻であるゲルダ役をアリシア・ヴィキャンデルが演じている。第88回アカデミー賞ノミネーションでは、主演男優賞にエディ、助演女優賞にアリシアと主要含む4部門にてノミネートされている。

 本作でもタッグを組んでいるトム・フーパー監督作品「レ・ミゼラブル」(12)のマリウス役で日本でも大ブレイクした英国俳優のエディ・レッドメインは、「博士と彼女のセオリー」(14)では車椅子の物理学者スティーヴン・ホーキング博士になりきるために、博士の動画を観て研究し、ALS(博士が患っていた病気)の患者30人と面会をするなど、その役作りに半年を費やした。本作でも、そのストイックな役作りの姿勢は変わっておらず、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベを熱演している。

 「リリー・エルベは勇気ある女性だ」と語るエディは、「僕は彼女の世界に入り込んで、彼女の内面を洞察した。演じることのスリルは、役になることで自分自身を超えられること。今回、トランスジェンダーのコミュニティーの方々と会い、その人生、強さ、現実について話を聞いたのは最も重要な事だった」と話し、実際にトランスジェンダーのコミュニティーの方々と直接会い、役作りのために多くの時間を割いたという。「毎日、僕にとってはすべてが勉強だった。僕が出会った人たち、皆がシェアしてくれた経験は僕を変えてくれた。とても感謝しているよ」。その熱心な姿を隣で見ていた、妻のゲルダ役を演じるアリシア・ヴィキャンデルは、「エディは役に入り込んで、トランジションする前の自分をうまく表現できずに、鎖につながれているようなリリーを繊細に演じているわ」と称賛を送り、そのストイックさに驚きを見せている様子。

 また、監督は「エディにとって、不安は驚くべき意識のレベルとハードワークに駆り立てる燃料になる。彼は演じている時、自由なんだ。カメラが回った瞬間、その不安を完全に乗り越えることができるのは、彼を偉大な役者にしている要素のひとつだと思う」と絶賛しており、「初めて脚本を読んだ時、リリー役はエディしかいないと思った」とエディへ絶大な信頼を寄せている。

 ホーキング博士に続いて難役でありながらも、「もしリリーを演じ、彼女の物語を伝えられる幸運な機会に恵まれたら、全身全霊で演じるべきだ。大変な栄誉でとても責任があることだから」と語り、敬意を持って全身全霊で演じているエディ・レッドメインの演技にぜひ注目してほしい。

【ハリウッドニュース編集部】