是枝裕和監督(53)が7日、横浜市の関内ホールで行われた第37回ヨコハマ映画祭授賞式で、最多5冠を受賞した「海街diary」の秘話を明かした。

 この日、主演女優賞を受賞した綾瀬はるか(30)新人賞受賞の広瀬すず(17)、長沢まさみ(28)、夏帆(24)が演じた4姉妹の家は、北鎌倉の民家を使って撮影された。

 同監督は撮影当時を振り返り「この映画は、舞台になったおうちがありまして、ある意味、家が主役の映画だった。実際にお住まいになっている方がいらっしゃるのに、撮影で何度も何度もお邪魔して、そのたびに短期賃貸マンションに移っていただいて。最初は表だけって言っていたのに、そのうち、重たいカメラを2階にまで上げて、窓から梅の木を撮った。だますつもりはないですが、どういうアプローチをしたら、撮らせていただけるか考え(撮影のオファーは)小出しにしてました」と苦笑した。

 劇中では、梅の木になった実を収穫し、梅酒や梅ジュースを作る4姉妹の姿が描かれ、梅酒が熟成していくさまも、時間の経過を表現するキーポイントになった。梅の木は撮影のために植えたが、その後、花を咲かせて実がなり、家の持ち主が実で梅酒を造って送ってくれたという。

 是枝監督は「迷惑をかけ通しで撮らせていただいたのにもかかわらず、梅酒にして送ってくださいました。お祝いで、いつかスタッフ、キャストみんなで飲みたいと思っています。目に見えないところで、いろいろな人たちに支えられて映画を撮っていて…そういう人たちと幸せを分かち合う映画を、監督は作っていかなければいけないと思っています。頑張ります」と語った。

 綾瀬は「現場は大家族みたいな雰囲気で、監督はお父さん。『よーい、スタート!』って(撮影が)始まっているんですけど、始まってた? みたいな自然な空気感で、撮影しているという意識がなかった」と振り返った。

 広瀬は「(現場は)何か撮影している感覚がなかったです。初めて映画をガッツリやらせていただき(綾瀬ら)お姉ちゃんたちとカンヌ映画祭にも連れて行っていただいた」と大切な作品であることを強調した。