4度目の世界王座返り咲きを目指し、45歳にして現役の元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎のドキュメンタリー映画「ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年」(20日、シネ・リーブル梅田などから順次公開)の完成披露試写会が10日、大阪市のABCホールで行われ、辰吉と阪本順治監督(57)が公開前の心境を語った。

 94年12月の同王座統一戦で薬師寺保栄に敗れた後、95年8月から、辰吉の次男寿以輝(じゅいき)がプロテストに合格した昨年11月までを収めたフィルムを、辰吉のインタビューを中心に編集した。

 95年公開の「BOXER JOE」も撮り、89年の雑誌対談以来、今や身内同然のつき合いになる阪本監督は「当時は僕自身、消化不良だった部分があり、引退したら発表するつもりで(カメラを)回して来た。(引退まで)まあ4~5年かな、と思ってたんですが…」と苦笑い。「20年やし、僕が編集して見たくなったので」と公開に踏み切った理由を語った。

 ところが、辰吉は「こっちはあっちゅう間の20年です。ほんで映画にするって。勝手にすんなっちゅう話です。わし、まだ辞めてない、現役やのに」と“約束違反”であることを、ジョークまじりに訴えた。

 20年の間には、寿以輝がプロになるなど、変化はあった。その寿以輝は3月27日にプロ4戦目を迎える。「親やけど、トレーナーやない。だから、気になるから見るだけ」という辰吉だが「追う側から追われる側になってきた。これからが大変。オヤジがオヤジやし、そら相手にしたらつぶしがいがありますから」と息子の行く末を案じる心境も口にする。それでも、今後も自分が現役であり続ける気持ちは変わらない。

 阪本監督は今後の辰吉については、悟ったようにコメントした。

 「これまで身内感覚で心配したこともあります。でも、もう止めました。本人が目標を4つ目のベルト(4度目の返り咲き)って決めてしまってる。彼にとって、練習は朝起きて歯磨きするみたいなもの。なにも特別なことやない。だからもう(引退については)触りません。見つめていくだけです」-。

 これを聞いた辰吉は「そ、触らぬ神にたたりなし」。阪本監督は「ね? うまいこと言うでしょ」と息のあった漫才のように締めくくった。