女優多部未華子(27)が本格的な歌唱に初挑戦した。主演映画「あやしい彼女」(水田伸生監督、来月1日公開)の劇中で「見上げてごらん夜の星を」など4曲の昭和歌謡を、本職顔負けの伸びやかな声で披露している。

 05年映画「青空のゆくえ」でブルーリボン新人賞、09年にNHK連続テレビ小説「つばさ」でヒロインを務めるなど演技力には定評があるが歌は初めて。「カラオケでは、KiroroやSPEEDを歌いますが、ごく親しい人の前だけ。1人でも初めての人がいたら、絶対に歌わない」と自信がなかった。

 「あやしい彼女」の音楽プロデューサーを務めた小林武史氏(56)の指導のもと、3カ月間のボイストレーニングで見違えた。「最初は音程が狂う、ピッチが変わる。本当に基礎からでした。出来上がった映像を見ても、本当にこれで大丈夫かなと思ってます」と不安をのぞかせるが、小林氏は「まるで別人のようだ」とトレーニング後の成長を認めている。ラストシーンではマイクパフォーマンスも鮮やかにロック歌手のような動きも見せている。

 映画は、73歳の老婦人が突然20歳に若返り、老成した行動と見た目のギャップで笑わせる奇想天外なコメディー。倍賞美津子(69)が変身前を演じている。「撮影前に倍賞さんからお話をうかがう機会があったのですが、私にはそんな膨大な人生経験があるわけではもちろんないし、とにかく一生懸命想像を膨らませました」。それでも「松竹新喜劇大好き」というだけあって、ワンテンポずらした微妙な間合いで笑わせる。歌と年齢のギャップを見事にこなし、適応能力の高さを見せつけている。

 一方で「結婚して子供ができたら、女優はいったんお休み。その後、復帰するかは旦那さんの稼ぎしだいですかね」と、意外にも女優業に執着はない。このカラッとした感覚も、変幻自在の持ち味につながっているのかもしれない。

 人気俳優とのツーショット目撃談が昨年伝えられたが「あれは全然ありませんから」。当面の結婚相手には具体的なイメージはないそうだ。【相原斎】

 ◆多部未華子(たべ・みかこ)1989年(平元)1月25日、東京都生まれ。02年に芸能界入り。04年WOWOWドラマ「理由」で女優デビュー。映画「HINOKIO」「青空のゆくえ」で06年にブルーリボン賞新人賞。09年NHK連続テレビ小説「つばさ」でヒロインを演じた。映画は「君に届け」「ピース・オブ・ケイク」など。158センチ。血液型O。