文楽ファンの上方落語家桂春之輔(67)が2日、文楽への補助金削減を強行した橋下徹前大阪市長(46)に嫌みを連発させつつも、結果的に文楽再興のきっかけになったことを感謝した。

 春之輔はこの日、大阪市北区の同協会会館で、豊竹英太夫(とよたけ・はなふさだゆう、69)とともに、文楽を応援する落語会「忠臣蔵特集」(6月10日、天満天神繁昌亭)を発表。同会は補助金削減を受け、落語界が文楽を応援しようと、14年からスタート。今年で3回目になる。

 「文楽は大阪の庶民のものやった。せやのに、なぜか、江戸の落語家には浄瑠璃をやる師匠方もおられたのに、上方ではおらん。そういう土壌が、大阪文化、芸人への理解がない市長を生んだちゃいますか」

 上方文化における文楽の立ち位置の変化を憂い、そして「文楽は想像力をかきたてられて、見ていて“まどろむ”んですわ。同じ忠臣蔵をやっても、歌舞伎ではそうはならん。そこがいい」と続けた。

 文楽の魅力を訴えつつ、文楽ファンは「優しい」とも。橋下前市長は、補助金削減を打ち出した際、何度か文楽鑑賞に出向いているが、いわば“敵”の来場に、国立文楽劇場(大阪市中央区)の文楽ファンは温かい拍手で迎えたことがあった。

 春之輔は「文楽ファンはほんま優しい」。これについて、英太夫も大きくうなずき「ただね、結果的には文楽のことを知らない人も知るきっかけになった。確かにあれ以降、お客さんは増えている」とし、知名度と集客力アップにつながったと話した。

 春之輔も「確かに、お客さんは増えましたな。その点では感謝しなあきませんな」と話していた。

 なお、3回目の今年の「文楽応援の落語会~忠臣蔵特集」は、忠臣蔵をテーマにした落語を集めた。もともと、文楽が描いた忠臣蔵の物語が歌舞伎、落語へ発展していった経緯があり、春之輔は「質屋芝居」を演じ、中入り後には、英太夫らが参加した文楽トークも予定。落語会は、桂春蝶が「七段目」で締め、トリを務める。