故5代目桂文枝さん門下で、失明を克服して高座復帰した落語家、桂文太(63)が6日、大阪市内で、6月8日に大阪・なんばグランド花月で開く2年連続2回目の独演会「桂文太ぷれみあむ落語会inNGK~語り草2」を発表した。

 この日も7歳4カ月になる盲導犬デイリーとともに記者会見に出席。目が不自由ゆえの苦労を語った。

 「デイリーのおかげで劇場へも行けるようになった。目が見えなくなってから落語も心で演じられるようになった」。前向きさを失わない文太だが、デイリーとの“生活”は、すべて「訓練」ありきで成立していると強調した。

 「たとえば家を出て、NGKや(天満天神)繁昌亭へ行くのも、僕もデイリーも訓練されているから行ける。最近、怖いと思うのは、駅で点字ブロックの上へ荷物を置かないで、というアナウンスが減ったこと。最近は歩きスマホの注意が増えたから」

 文太にとって、点字ブロックは生命線。分からなければ、ホームに落ちてしまう。アナウンスは“命綱”でもある。

 「こないだ、アナウンスで『電車が入ってきました』言うたので、前へ進もうと思うたら、デイリーが身をていして止めてくれた。歩こう思うたら、デイリーがおるんですわ。まだ、電車が到着してなくて、危うくホームに落ちるとこ。あのとき、デイリーがおらずに、1歩踏み出してたら…。『入ってきます』と『入ってきました』では、えらい違いなんです」

 今月3日にも、駅のホームで、恐怖に直面した。

 「祝日でダイヤ変更がされてたようで、いつもと違う電車で(普段は各駅停車の地下鉄路線に乗り入れる私鉄が)特急やった。乗り過ごして、戻ったらええだけやけども、僕らはそれを訓練してない。隣の女性に(降車駅で)駅長室に連れて行ってもらよう頼んで、なんとか(目的地へ)到着しました」

 苦労ばなしを語るうち、昨秋、徳島県で、盲導犬ともども命を落とした全盲の飼い主の話を出し、涙ぐむ場面もあった。

 達者なしゃべり、豊かな人物描写の高座と同じく、温かい人柄をそのまま出した会見となり、文太は「涙もろいんでね」と照れた。

 また、2回目の独演会についても、高ぶる気持ちを抑えられない。「また今年もやらせてもろて、最初はウソやろと思ってましたけど、ありがたいことです」と喜びを語った。

 今回は、古典の「伊勢参宮神乃賑」、江戸落語を文太が上方風にアレンジした「松島心中」など、計3席を予定。ゲストには、同じ文枝一門の桂文三と、桂米団治が出演する。