是枝裕和監督の新作「海よりもまだ深く」(21日公開)に主演した阿部寛(51)がカンヌ映画祭に初参加した。「ある視点」部門で18日(日本時間19日)に公式上映され、是枝監督、真木よう子(33)樹木希林(73)とレッドカーペットを歩いた。

 新調したフランスの有名ブランド「ベルルッティ」のタキシードに身を包んだ。出発前に「子供のような目で映画祭を見て、全てを吸収したい。初心のような気持ちです」と話した。言葉通り表情は輝いていた。レッドカーペットの感想は「やっとここに立てたと思いました。是枝組で立てて本当にうれしかった。感動しました」。

 カンヌを意識したのは、04年に柳楽優弥が是枝監督「誰も知らない」で日本人初の男優賞を受賞した時。ただ当時は、ぼんやりとした憧れだった。モデルから俳優に転身し17年たっていたが、映画出演は少なかった。08年にカンヌ常連の是枝監督作品「歩いても歩いても」に初出演。以前と違う感覚でカンヌを意識した。2度目の是枝作品で、憧れの場所にたどり着いた。

 「海よりも-」は阿部演じるダメ息子を中心にした物語。上映後、総立ちの拍手が7分間続いた。「受け入れていただいてうれしい。本当にいい経験でした」と話す阿部に、樹木も「この映画をターニングポイントにしてまた変わるわね」。「カンヌへの参加は大きな宝物。俳優の経験としてどう実らせ、育てていけるのか楽しみ」と話していた阿部。今回の経験が大きな1歩になることは間違いない。