埼玉県の文化事業の一環として国内外で公演を繰り広げてきた平均年齢77歳の高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」が創設者の演出家、蜷川幸雄さん(12日死去)の遺志を継ぎ、今後も活動を続けることを決めた。団員39人の多くが継続を希望、12月7日にさいたま市で開かれる群像劇「1万人のゴールド・シアター2016」に向けて再出発する。

 劇団は、彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)の芸術監督に就任した蜷川さんが全国から団員を募集し、2006年に旗揚げ。年齢を重ねた人々の経験を演技に引き出した異色の舞台は高い評価を受け、13年からはフランス、ルーマニアなどで海外公演も開いている。

 劇場を運営する埼玉県芸術文化振興財団の竹内文則理事長は、5月27日の会合で「蜷川さんが築いたレガシー(遺産)を引き継ぎ、世界に発信しなければならない」と強調。65~90歳の団員からは「息の続く限り、頭の続く限り、せりふが覚えられる限りやる」といった声が上がった。

 12月の群像劇はノゾエ征爾さんが演出、脚本を担当。ゴールド・シアター以外からも60歳以上の参加者を募集し、20年東京五輪・パラリンピックの文化プログラムに発展させる狙いだ。このほか蜷川さんの生涯をモチーフにした舞台「蜷の綿」の上演や、原発事故をテーマにした劇作家、岩松了さんの新作公演に向けた準備も進める。