14年にゴーストライター騒動で話題となった佐村河内守氏(51)のドキュメンタリー映画「FAKE(フェイク)」の森達也監督が、「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」の著書であるノンフィクション作家、神山典士氏の発言に対し「あまりに事実と乖離(かいり)している」として反論した。

 事の発端は、神山氏が自身のフェイスブックに投稿した16日の記事。神山氏は雑誌の編集長から森氏との対談を提案されたが、「ところが森達也が、コウヤマとは会話がかみ合わないたろうからやっても無駄だと言ってきた」(原文まま)と伝えられたとし、「ふざけるな!」と激怒。続けて「映画の中で、森達也はぼくと新垣さんのことを、多忙を理由にインタビューを断ったと言っています、事実は違います、ぼくはメールではっきり言いました、あなたは佐村河内氏は謝罪したと書いているが、ぼくはしていないと思っている、その点で主張がちがうから会う気にはならない、と、新垣さんは、隠し撮りにあいました、事務所がそれを抗議したのですが、返答がなかった、だからインタビューを断った」と主張した。

 この神山氏の発言に、映画「FAKE」制作委員会は20日にフェイスブックで「映画の自由な解釈を担保するため、作品内容への批判には反論しません。たとえそれがどれほど貧しい映画の観方であってもです。しかし本作の取材・撮影過程の出来事について、事実と異なる記述がなされていたため、製作委員会で対応を協議しました。結果、これを看過することはできないと判断した次第です」として、森監督のコメントを掲載した。

 森監督は、そもそも神山氏の言う雑誌編集長から対談の提案を受けていないとし、この件について「編集長からも神山さんに抗議があったはずです。明らかに事実誤認です。速やかな訂正を望みます」とした。

 また森監督は、神山氏がインタビューを断った理由についてフェイスブックにつづった箇所について、「神山さんがFBで公開したこの記述が、神山さんが僕への返信メールに実際に書いた文章とまったく違うことは、神山さんもよくわかっていますよね。だってご自身で書いているのだから。その返信メールは僕の手もとにあります。日付は2015年の10月8日」と、無断での公開は控えたが、その“証拠”があることを明言した。

 そして森監督は、「公開されたFBには、こうした要素は他にもたくさんあります。ちょっと驚いています。あきれています。こうした手法で神山さんはノンフィクションを書かれるのですか。ならばそれこそFAKEです」と痛烈に批判した。