漫才コンビ「オール阪神・巨人」のオール巨人(64)の新シングル「男の子守唄」がヒットしている。5月18日に発売され、オリコンデーリーランキング(演歌・歌謡曲)初登場2位を記録した。夢を追い続けようと歌う人生の応援歌でハーモニカの音色が印象的な曲だ。予想以上の反響にオール巨人も驚いている。

 「男の子守唄」は「恋」「酒」「夢」をキーワードに、ゆったりとした曲調にのせて「朽ちて枯れるが運命(さだめ)でも せめてひと花咲かせたい」など、まだまだ夢は諦めないと歌う。4月からNHK「ラジオ深夜便」の「深夜便のうた」に選ばれ、郷愁漂う曲が中高年を中心としたリスナーの間で話題になっていた。

 5月18日にシングルとして発売されると、オリコンデーリーランキングで初登場2位の好スタートを切り、その後も順調にセールスを伸ばしている。巨人は「反響すごいです。タクシーに乗れば『聴いてるよ』と言われ、街でもおばちゃんから『ええ歌やな』と声を掛けられる。(NHKなどに)『本当に巨人が歌っているのか』という問い合わせも多かったらしいです」と笑う。

 歌手活動もするオオガタミヅオが28歳の時に作詞・作曲した曲だが、約30年の時を経てCD化の話が持ち上がり、巨人に白羽の矢が立った。「歌詞に共感できる部分がある。50、60代、もっと年がいくと分かると思う。恋を思い出したり、酒を飲んで『俺、あかんのちゃうかな』と思いながらも『もういっぺん花を咲かしたい』っていう。みんなそういう気持ちで酒を飲んでると思いますよ」。

 本業は漫才師だが、歌の実力も折り紙付きで「男の子守唄」は9枚目のシングルだ。それでも今回は曲にほれ込み、レコーディングに備えて初めてボイストレーニングに取り組んだ。「大事に歌おうと思ったけどね、(キーが)高いところは、いっぱいいっぱいなんですよ。うまく出せないかなと、ボイトレを2回ほどやりました」。

 相方のオール阪神(59)もヒットを喜んでいる。「歌をやると阪神君も『ありがたい』と言うんです。営業でお客さんにも喜ばれるし、ナンボでも(出番の)時間延びるしね」。ただ「喜んでもらえるような漫才ができなくなったら、すぐに漫才はやめるつもり」と本業あっての歌手活動というスタンスだ。

 昨年はコンビ結成40周年を迎え、今年3月に「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞。5月に上方漫才大賞で史上最多4度目の大賞を受賞するなど輝かしい活躍を続けているが、周囲からNHK紅白歌合戦初出場を期待する声も上がっている。「選ばれたらえらいこっちゃやわ」と笑うが、「高校野球の『21世紀枠』みたいな特別枠があったらええのにな」といちるの望みも抱いている。【松尾幸之介】

 ◆オール巨人(きょじん)1951年(昭26)11月16日、大阪府生まれ。75年に漫才コンビ「オール阪神・巨人」結成。吉本興業の同期は明石家さんまや島田紳助さん。ボケとツッコミを固定しない正統派「しゃべくり漫才」スタイルで、上方漫才大賞などを受賞。82年シングル「あんじょうやりや」でソロ歌手デビュー。184センチ。