「11PM」「クイズダービー」など人気番組の司会者として親しまれたタレントで元参院議員の大橋巨泉(おおはし・きょせん、本名克巳=かつみ)さんが12日午後9時29分、急性呼吸不全のため千葉県内の病院で死去した。所属事務所が20日に公表した。82歳だった。05年以降、胃がんや肺がんを患い、手術を受けていた。葬儀・告別式は親族のみで行った、喪主は妻寿々子(すずこ)さん(68)。後日、しのぶ会を開く予定。

 巨泉さんの闘病は11年間に及んだ。05年に胃がんの手術、13年に咽頭がん、14年にリンパ節のがん、15年に肺がんとリンパ節のがんが判明、今年2月に左鼻腔(びくう)内のがんが見つかった。関係者によると、寿々子さんと弟夫妻の3人に見守られ、眠るように亡くなった。6月下旬に危険な状態になったが、懸命に生きようとする姿に医師も心臓が強いと驚いていた。

 寿々子さんは文書で訃報を公表した。巨泉さんは6月に入ると体力が衰え、7月からは眠る時間が長くなった。娘や孫の見舞いに笑顔を見せたが、目元や口元の動きで意思を伝える状態だった。今月7日に死去した永六輔さん(享年83)の訃報はショックの大きさを考慮して伝えなかった。

 寿々子さんは文書に「どうぞ大橋巨泉の闘病生活に“アッパレ!”をあげてください」と記した。「勇敢に戦ってきました。特に4月からの3カ月間は死を覚悟し、全てを受け入れ、一言も文句を言わず、痛みも訴えず、じっと我慢をしてくれました」と夫をたたえた。

 巨泉さんを師匠と慕い、通夜にも参列したフリーアナウンサー小倉智昭(69)もフジテレビ系「直撃LIVEグッディ!」の中で「亡くなった巨泉さんの手を奥さんがずっと握っていたそうです」と紹介。「巨泉さんは言葉が出なくなってから『ありがとう』と言えず、奥さんに(指を使って)手を見せて3と9でサンキューとやっていた」と話した。

 巨泉さんは体力の落ち込みを感じ、3月27日に国立がん研究センター中央病院に緊急入院した。がんは発見されず4月5日に退院、同日から在宅介護を開始したが、意識が薄れたり、歩行もままならず同11日に緊急入院。寿々子さんは「(在宅介護中に)受けたモルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与による影響も大きい」と入院先の医師から伝えられたとしている。入院後、5月下旬に集中治療室に入った。小倉は「80キロ以上あった体重が最後は43キロだったそうですが、もっと少なかったのでは」と話した。

 通夜は18日、葬儀は19日に親族で済ませた。法名は「巨泉院釈克導(きょせんいんしゃくこくどう)」。

 「11PM」「クイズダービー」などの番組でプロデューサー的役割も務め、豊富な知識、独創的な発想、当意即妙な受け答えで一躍人気者に。「11PM」では当時テレビが扱うことがなかった競馬やマージャン、ゴルフ、お色気も取り入れ、テレビの常識を覆した。

 ◆大橋巨泉(おおはし・きょせん、本名克巳=かつみ)1934年(昭9)3月22日、東京都生まれ。60年代から90年までの間、日本テレビ系「11PM」やTBS系「クイズダービー」「世界まるごとHOWマッチ」など人気番組で司会を担当。90年3月に全レギュラー番組を降板してセミリタイア。01年参院選で民主党から出馬して当選するが党内で対立して6カ月で辞職。連載コラムなど著述業を中心に活動。家族は妻寿々子さんと、64年に離婚した先妻との間にジャズ歌手の長女大橋美加と次女豊田チカがいる。血液型B。