昨年3月に亡くなった人間国宝の落語家、桂米朝さん(享年89)の長男桂米団治(57)が23日、大阪市内で毎夏恒例の「桂米団治独演会」を開いた。師匠であり、父でもある米朝さんの十八番だった演目「算段の平兵衛」「軒付(のきづ)け」「稲荷俥(いなりぐるま)」の3席を披露した。

 「去年(15年)と今年(16年)で大きな違いは、親(米朝さん)がいるかいないかということ。今年1月に(桂)春団治さんもお亡くなりになり、上方落語四天王は皆さん旅立たれた」。今年の独演会は師匠のネタを受け継いでいくという思いを込め、演目を選んだ。

 トリのネタ「算段の平兵衛」は悪知恵を働かせてお金をかせぐ悪人が主人公。誤って殺してしまった村の庄屋の死体の処理をめぐって、得意の策略を巡らすストーリー。米朝さんが掘り起こして肉付けし、現代によみがえらせた作品で「米朝十八番」の1つだった。

 トリの前には話題のスマホアプリ「ポケモンGO」について「事務所のスタッフが楽屋で『つかまえたっ!』って。客席にもポケモンがいたそうです」と触れ、「僕はまだガラケーなので」と人気ゲームは未体験だと明かした。

 その上で「実はポケモンGOは落語と同じなんですよ。落語は、はなし家が1人で話すバーチャルなんです」と説明した。それでも「なんか違うかな。落語とポケモンとの世界は違う」と力説し、「算段-」では庄屋の死体を踊らせる盆踊りのシーンをリアルに演じた。