高倉健さん(享年83)の美学に迫った長編ドキュメンタリー映画「健さん」が20日に公開される。メガホンをとった日比遊一監督(51)はニューヨーク在住。製作の動機について「健さんと面識はない。ただ海外の人があまりにも健さんのことを知らないので悔しかった」と話す。「世界で知られている日本の俳優は三船敏郎さんだけ。勝新太郎、石原裕次郎、萬屋錦之介、市川雷蔵、渥美清、健さんを吹っ飛ばして、いきなり今の渡辺謙さん。健さんがすごい俳優だったことを言葉にして世界へ向けて発信したかった」と言う。

 映画は国内外の映画人ら20人以上の証言で構成している。89年映画「ブラック・レイン」で共演したマイケル・ダグラス(71)は「凜と立つだけで体の中心が見える気がした。それが健さん」。74年に主演した米映画「ザ・ヤクザ」の脚本担当のポール・シュレイダー氏(70)は「スティーブ・マックイーンと同じ。代わりがいない。違う役者が演じたら違う映画になってしまう」と話してる。このほかマーティン・スコセッシ監督(73)ジョン・ウー監督(70)ら映画人が高倉さんの魅力を語っている。08年まで40年間、付き人だった西村泰治氏(76)らも登場する。

 日比監督は「ダグラスには手紙20通を書き、スコセッシ監督は6カ月待った。大変だったけど鳥肌が立つようなインタビューが撮れた。健さんは日本人の誇り。世界の多くの人に見てほしい」と話す。【小谷野俊哉】