俳優の平幹二朗(ひら・みきじろう)さんが都内の自宅で急死していたことが23日、分かった。82歳だった。

 舞台映えする堂々とした立ち姿、隅々まで響き渡るせりふの力強さで、観客に芝居の醍醐味(だいごみ)を与え続けた俳優の平幹二朗さん。劇団俳優座でデビューしてから60周年の節目の年に、舞台を去ることになった。

 「ハムレット」「オセロー」「リア王」…。シェークスピア作品は平さんの代名詞と言え、演出家の蜷川幸雄さんらと数々の名舞台をつくり上げてきた。特に声量豊かで、感情の起伏を巧みに表現するせりふ回しで、人物を造形するスケールの大きさが魅力だった。

 近年は蜷川さん演出の「ハムレット」で、かつて演じた主役ハムレットではなく、クローディアスを演じるなど、脇にまわって舞台を引き締めることも増えた。役の幅を広げながら、藤原竜也さんらこれからの舞台を担っていく俳優たちに背中を見せてきた。事務所関係者も「テレビドラマも舞台も、まだまだ出演する予定だったのに…」と声を落とした。

 ある演劇関係者が「平さんの発声は、喉を締め付けるようで勧められない」と俳優を目指す若者たちに話したことがある。だがそれも、平さんの規格外の存在感を物語るエピソードといえるだろう。