アニメ「ドラえもん」で初代スネ夫を演じた声優肝付兼太(きもつき・かねた、本名兼正=かねまさ)さんが20日、肺炎のため死去した。所属事務所が24日に発表した。80歳だった。6年前に肺がんと告知されていた。「おそ松くん」「銀河鉄道999」「ドカベン」など人気アニメで声を演じた脇役は、幅広い世代に親しまれた。葬儀・告別式は近親者で行った。

 所属事務所によると、肝付さんは今年に入ったころから体調を崩していた。都内の病院で検査した結果、肺炎と診断された。その後も何度か検査入院したが、退院すると元気な様子で仕事をしていた。50歳を過ぎてから少し飲めるようになったアルコールをたしなみながら、声優の後輩と談笑することもあったが、療養生活は続いていた。

 NHK・BSプレミアム「ワンワンパッコロ!キャラともワールド」と、NHKラジオ第1「ラジオ深夜便」の収録を9月末に行い、これが最後の仕事になった。「ワンワン-」の制作スタッフは「以前と比べると息苦しい様子でしたが、役になりきって声を出していただいた」と話した。「ワンワン-」の放送日は未定、「ラジオ深夜便」は11月上旬に放送する予定。

 ラジオドラマの仕事を経て声優の道に進んだ。テレビアニメ草創期から多くのキャラクターを演じた。79年スタートの「ドラえもん」では、のび太をいじめる裕福で要領の良いスネ夫を独特のかれた高い声で25年余にわたって演じ、世代を超えて親しまれた。ほかにも「おそ松くん」のイヤミや、「元祖天才バカボン」のおまわりさん、「銀河鉄道999」の車掌、「ドカベン」の殿馬など個性的な脇役を多く演じた。「アンパンマン」ではホラーマンを演じ、7月に公開された劇場版にも出演していた。

 NHK「おかあさんといっしょ」の人形劇「にこにこ、ぷん」では、じゃじゃまるの声を担当した。劇団21世紀FOXを主宰し、舞台演出も手掛けてきた。

 「ドラえもん」の声優仲間は、ドラえもんを演じた大山のぶ代(83)は認知症を発症して闘病中。ジャイアン役のたてかべ和也さん(享年80)は昨年6月に死去した。たてかべさんの葬儀の弔辞で、自分もかつて肺がんを宣告されていたことを告白。遺影に向かって「ジャイアーン!」と大声で呼び掛ける姿が印象的だった。

 ◆肝付兼太(きもつき・かねた)本名・肝付兼正(かねまさ)。1935年(昭10)11月15日、鹿児島県生まれ。帝京高校卒業後、会社に勤務しながらラジオドラマの仕事を始めた。その後、声優の道に進んだ。俳優として56年「こぶしの花の咲くころ」で映画デビューしている。趣味はゴルフ、落語、浪曲。