昨年3月に亡くなった桂米朝さん(享年89)の長男で落語家、桂米団治(57)が25日、大阪市内で父を含む「上方四天王」への思いを語った。

 中でも86年に亡くなった故6代目笑福亭松鶴さん(享年68)には「怖いイメージもありますが、当時は枝鶴さん(先代)がまだ蒸発せずにいたので、親近感があったのか、かわいがってもらいました」と、懐かしそうに語った。

 豪快で一本気な性格、芸風で知られた6代目松鶴さんは、弟子への厳しいしつけでも有名だったが、自らも当時は息子が弟子として活動しており、同じく父・米朝のもとで励む米団治には、目をかけていた。

 「まだ駆け出しの頃に、松鶴師匠が(掛け合いのある)『質屋芝居』をやるというので、僕に『“陰の声”やってくれんか』と。ちょうどテープを聴いたばかりやったんで、本当にうれしくて、松鶴師匠と掛け合いやらせてもろたんが、忘れられません」

 大師匠と掛け合いを演じた若手時代を思い、米団治は照れながら語った。既に父の米朝は亡く、今年1月に3代目桂春団治さん(享年85)が亡くなり、故5代目桂文枝さん(享年74=05年死去)も含め、四天王すべてが他界した。

 4人は全員が戦後間もない47年に入門。当時は没落寸前だった上方落語を再興させ、現在は上方落語協会員だけで256人の隆盛を誇り、長らく「上方復興の四天王」と呼ばれてきた。

 4人の入門から70年目となる今年、11月22日に大阪・国立文楽劇場で「上方落語四天王追善落語会」を開催。同23日には、4人の映像を収めたDVDボックスが発売される。

 米団治は「四天王を知らない若手世代も増えてきた。はなし家にとっても、最高のテキストになるんやないかと思います」と言う。

 現在、上方落語協会では、5代目文枝さんの筆頭弟子で、名跡を継いだ6代桂文枝(73)が会長を務めているが、6代文枝も最近は盛んに「世代交代」を口にするようになってきた。

 その世代交代で、次のリーダー格世代に当たる米団治は「次のけん引役の端っこでも、力を出していきたい」と話した。

 追善落語会には、米朝一門から米団治、文枝一門からは6代文枝、松鶴一門からは笑福亭鶴光(68)、春団治一門からは筆頭の桂福団治(75)が出演する。演目は当日まで伏せられるが、それぞれ師匠の十八番から選ぶという。

 人間国宝だった父が亡くなり1年半、米団治は「自宅の膨大な資料整理もあり、あっという間でしたね。まだまだこれからですね」と振り返った。

 次世代のけん引役の1人としては「僕自身は米朝の介護から、今は資料整理と、ちょっと足踏みの時代ですが、あと2年で還暦になります。還暦になったら、新しいアンテナを張って、新しい自分をプロデュースして、作っていきたい。あと2年、その準備期間やと思ってください」と決意を口にしていた。