高校野球の池田(徳島)で夏春甲子園連覇を達成するなど3度の日本一に輝いた名将・蔦文也監督(故人)に迫ったドキュメント映画「蔦監督~高校野球を変えた男の真実~」の限定上映会が、11月19日午後1時から東京・LOFT9 Shibuyaで行われる。

 同映画は蔦監督の孫で「祖谷物語 おくのひと」を手掛けた映画監督の蔦哲一朗氏(32)がメガホンを執った。祖父の実像に迫るため11年から5年にわたり、家族をはじめ地元の人々、元横浜畠山準氏、元巨人水野雄仁氏ら教え子、特攻隊時代の友人などをインタビュー。部員11人でセンバツ準優勝した「さわやかイレブン」や「攻めだるま」の異名通り、強打で成し遂げた夏春連覇などの実写映像を交えて、2時間6分のドキュメントにまとめた。中には大ブームを巻き起こしたがために、講演活動などでグラウンドに顔を出しにくくなった蔦監督を非難する部員たちの文書なども紹介している。一方で15年に他界したキミ子夫人に何度もカメラを向け、夢を実現させた夫婦愛と本音を描いている。

 同映画は高校野球の実写映像が使われているため、商業活動ができない。そのため、全国40カ所以上で実施された上映会はすべて入場無料で行われ、会場でカンパを募っている。渋谷でも入場無料となるが、ドリンク付きの昼食を1500円で販売。高校野球ファンで脚本家、映画監督の足立紳氏、トータルテンボス藤田憲右をゲストに招き、トークショーも行われる。

 今春、新宿で行われた上映会は連日入場制限が行われるほどの盛況で、10月に再上映会が行われた。哲一朗監督はユニホームに身を包み、舞台挨拶後にカンパを呼びかけた。阿波池田を応援するキャラクター「つたはーん」もかけつけ、そろって新宿の街頭でPR活動をするなど奮闘が続いている。

 教育の一環という観点から高校野球には厳しい規制が設けられているからとはいえ、映画ファンにも支持されるだろう上質の作品が、劇場公開されない状況が続いている。それでも、全国を朗らかに積極的に回る哲一朗監督の姿は「攻めダルマ」に通じている。