NYカーネギーホールのアーカイブ1番人気を誇る伝説の歌姫の実話を、メリル・ストリープ(67)×ヒュー・グラント(56)の豪華共演で映画化した「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」(日本公開中)。主役のフローレンス・フォスター・ジェンキンスを演じたメリル・ストリープが、世界一有名な音痴マダム・フローレンスの魅力について語った。

 フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、実在したソプラノ歌手。裕福な家庭に生まれた彼女は、幼少の頃からピアノ演奏で才能を開花させ、17歳で年上の医師と結婚。しかし、夫から当時は死に至る病気であった梅毒をうつされたことにより、水銀やヒ素投与による治療を行った結果、副作用でピアノ演奏に支障が出始める。その後、夫と離婚し貧困状態に陥ったこともあり親元へと帰ることになるフローレンス。1907年に、本作でヒュー・グラントが演じるシンクレア・ベイフィールドと運命的に出会ったフローレンスは、すぐさま恋に落ちる。父が死去し莫大(ばくだい)な資産を相続したフローレンスは、NY社交界に進出!“マダム・フローレンス”としてNY音楽界に巨額の財産を投じるようになり、シンクレアと共に社交界のトップに立つ富豪として知られるように。

 ソプラノ歌手としてカーネギーホールでの公演を夢見るようになるフローレンスだが、彼女には音痴という致命的な短所があった。メリルはそんな彼女について、「彼女の歌の滑稽なところは、彼女が常に音を外して歌っていたところで、素晴らしいところは、私たち誰もが共感できるところよ。それは、挑戦して、頑張り続けるんだけど、失敗して、うまくいかなくて、でもその頑張りこそが素晴らしいんだってこと。フローレンスは『あとちょっと!』ってところまでたどり着くの。本当に、惜しいところまで来てるのよ。最後のフレーズではちゃんと歌えるんじゃないかという期待を生み出していたの」。さらにメリルは、「見方によれば、彼女は滑稽で、年老いていて、役立たずで、ぜいたくで、病人だけど、毎日『水が半分入っているグラスは、半分しか入っていないんじゃなくて、半分も水が入っているのよ。できる限り、幸せな気持ちでいるわ』って思いながら外に出かけていくような人だった。彼女は音楽を愛していて、私は彼女のそんなところが好きよ」と続ける。

 時として人が夢に向かって頑張る姿は滑稽に見えるかもしれないが、フローレンスの夢に対する思いは、今もなお人々の心を動かすカーネギーホール伝説の一夜を実現させた。そんなフローレンスの生き方は、メリルの女優としての姿勢にも通じるものがあるのかもしれない。【ハリウッドニュース編集部】