宮沢りえ(43)が観客の涙に演技への思いを新たにした。「湯を沸かすほどの熱い愛」で主演女優賞となったりえは、お忍びで劇場に出掛けた秘話を明かし、大泣きする観客の姿に「演じることの意味を改めて実感した」という。

 「湯を沸かす-」の劇場をこっそり訪れたのは公開から1週間を経た日だった。帽子を目深にかぶり、窓口でチケットを購入すると一番後ろの席に座った。

 余命宣告を受けながら、家族を支えるたくましい母の姿に客席からはおえつが漏れる。「お仕事サボッたのかもしれないけど、スーツ姿の男性が大きなタオルでゴシゴシ目をこすっている。舞台公演ではお客さんの反応が見えるんですけど、映画で目の当たりにするのは初めてだったから。そこに参加することがどれだけ貴重なことなのか。胸にぐっときましたね」と振り返る。当時を思い出したのか、かすかに目が潤んだ。

 胸元を強調した濃紺のパンツルックで登壇した姿は貫禄さえ感じさせたが「緊張してました。今年の映画界を代表する人たちに囲まれているんだ、という実感があって」という。

 母光子さん(享年65)が2年前、撮影の直前に亡くなり、演技にはそのときの思いが重なった。

 「演じることも生活の一部なんだと最近思います。娘役の2人(杉咲花、伊東蒼)とのやりとりでは想定を超えた不思議な空気が生まれました。劇場でそれを感じ、私自身驚きがありました」。お忍び鑑賞は、演技を超えた映画の力も新たに実感させた。

 次回作については「全く違うものに挑戦したい。今回のひたむきさとは対極にあるような」。演技派としての地位を固めながら、常に新しい発見を求める姿勢は変わらない。【相原斎】