【ニューヨーク13日(日本時間14日)=近藤由美子】X JAPANのYOSHIKIが米クラシックの殿堂、ニューヨーク・カーネギーホールで、全編ピアノ演奏するクラシック2日間公演を成功させた。また、就任式を目前に控えたドナルド・トランプ次期米大統領(70)に対し、人種差別のない平等な社会実現を期待した。

 公演の後半、YOSHIKIは感謝を口にした。「アメリカンドリームを求めて米国にやってきて、努力を続けた結果、今日ここに立てたことを光栄に思います」。そして、トランプ次期大統領に切なる願いを静かに訴えた。「黒人、アジア系、ヒスパニック(中南米)系とどの人種でも、米国はこれまで同様、努力する人にアメリカンドリームを追うチャンスを与えてくれる国であってほしい」。米国国歌をピアノ演奏すると、満員の2800人から拍手が起き、歓声に包まれた。

 トランプ氏が住むトランプタワーは、会場から約400メートルと近距離。周辺道路が一部封鎖されるなど、厳戒態勢が敷かれている。20日の大統領就任式まで1週間。人種差別的発言を繰り返したトランプ氏に対し、自宅周辺で時々デモが起きるなど批判的な声は少なくない。

 ロスを拠点とするだけに、トランプ氏の暴走を懸念する米国内の不安も肌で感じてきた。「まだ始まっていないから分からない」と言葉を選びながらも「トランプさんはとても頭のいい方。米国にとって、いいことをすると思っています」と新政権に期待した。

 個人的な思い入れも強い公演だった。クラシック好きの父親の影響から4歳でピアノを始めた。父親に買ってもらったレコードに収録されたベートーベンの名曲「月光」も披露した。父親はすでに他界。「父に見せたかった」と残念がった。

 昨年大みそかのNHK紅白歌合戦の楽屋にもピアノを持ち込んで練習した。前日12日は高揚感と反省でピアノを明け方まで弾き、徹夜で臨んだ最終公演。「達成感はあります」。スタッフへの感謝の言葉を述べる途中で、思わず涙ぐんだ。

 14年にX JAPANがマディソン・スクエア・ガーデンで公演を開催。ロックとクラシックの米国2大殿堂を制覇した。「どちらでも『また来て』と言われたことがうれしい。扉を開けた気がします」。3月にX-は欧州音楽の殿堂、英ウェンブリーアリーナ公演が控える。「次々と(大きな公演が)あって刺激的ですね」と笑顔を見せた。

 ◆カーネギーホール 1891年に鉄鋼王カーネギーが設立したニューヨークのマンハッタン7番街のコンサートホール。3ホールあり、YOSHIKIの公演は大ホールで開催。64年にザ・ビートルズが初のロックコンサートを実施。日本人は加藤登紀子、加山雄三、長山洋子らが公演を開催した。マディソン・スクエア・ガーデンとカーネギーホールで公演を開催した主なアーティストはザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、スティングら。YOSHIKIはアジア出身者として、米2大音楽殿堂を初制覇した形だ。