TBS系ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)は、放送終了から1カ月が経過した今も、続編を求める声は尽きない。その中、原作漫画の番外編が2月25日発売の月刊漫画誌「Kiss」(講談社)4月号に掲載される。原作者の海野つなみさんの担当編集者を20年以上にわたって続けてきた、講談社「Kiss」編集部の鎌倉ひなみさんが「逃げ恥」の魅力を語るインタビュー。最終回は主人公・森山みくりの伯母・土屋百合を主人公に描く「逃げ恥」番外編の内容と今後について語った。

 -番外編が気になる

 (原作では)最終回の前の回で(百合に心を寄せる)風見さんが、百合ちゃんに「じゃあ、今度、うちに行っていいですね?」って言って、どうする? というところで終わっていて、最終回では全く、そのことについて触れず「次の話は番外編で書きます」と書いています。百合ちゃんと風見さんの、その話…いたすだけです。メインは、そこです。人生、何があるか分からない。50幾つになって、そんなこともないだろうと思っていたら、初めてバージンブレイクをすることになったわけです。その戸惑いとか、いたすところだけを書いています。

 -番外編掲載後の「逃げ恥」の今後は?

 どうなんでしょうね? 先は何もないです。海野さんは(作品を)たたもう、たたもうとする方なので。最初は5巻くらいで終わらせるみたいな話をしていたんですね。反響もいいし全然、終わらないので、もっといくと思いますよ…と話をしていて、実際にいくことにはなったんですけど。今回も8、9巻の執筆くらいの時期…ドラマになる前くらいから、もうちょっと書かないか、という話は何度もしていて。でも、やっぱり、ドラマが終わってからも(連載を)ずっと続ける状況とか、書きたいことはほとんど書けたから、伸ばす状況というのは、本人的にはしたくないということで。読み切りも番外編を1こ、書いておしまいという形なので。

 -TBSラジオの番組で、海野さんは、みくりに似ているという話が出ていたが、実際はどういう方?

 確かに、みくりちゃんに近いかも知れないですね。ご本人も言っているように、津崎(平匡)さんに似ているところもあるし、百合ちゃんに近いところもあるんだろうな…という気もしますけれど、みくりちゃんが1番近いですね。美しい方ですよ。身長が高めで…関西弁で、かわいい方ですね。

 -海野さんの今後の予定は?

 他紙さんの読み切りと、うちでは原作みたいなものに挑戦してみようと。全くの新作漫画というのは、1年間はお休みして、旅行に行ったり、いろいろ見たりして、ちょっと給水してから、もう1度やりたいって。ご本人もおっしゃってますけど、「逃げ恥」の連載を始めて、すぐ映像化の話が来て、結構、すぐにドラマ化が決まっていたんですね。漫画賞もいただいたりしたので、「海野さん、これからバリバリやらなきゃいけないですね」と話している矢先に、病気して手術されたりして。それがあってから、海野さんは「やりたいことは、今やろう」という発想に変わったんです。「これを見に行きたいんで、ここは休みます」と、はっきり言われるようになりましたね。ただ、ドラマの告知が始まってからは「ドラマが終わるまでは絶対に休まないでください」と話をしました。この半年くらいは、すごく忙しくされていました。

 -アニメ化の可能性は?

 きちんと話を通してくださるなら、映画、アニメ…やってくれるなら、何をしていただいてもいいですし、やってくださいという感じです。今回のドラマ化に関しても、(要求が)すごい、うるさかったわけでもないと思いますし。

 -最後に「逃げ恥」ファンにメッセージを

 ドラマから入った方が多いと思うんですけれど、漫画の1話目の試し読みをして「ドラマと全然、違うじゃん」って(読むのを)やめられる方もいるとは思うんですよね。ただ、ドラマもそうだったように、漫画も全部読まないと物語も世界観は分からないので。ドラマは漫画の1巻の次に6巻がくるみたいに、セリフもシャッフルしているので、きちんと読んでくださるとうれしいです。海野さんは「こういう見方って、おかしくない?」みたいな、フラットな見方をする人間を書くのが、とてもうまい方で、そういう世界観は、これまでも、ずっと書いてきたんですね。「両手に愛をつかめ!」(95年)、「リフォーム父さん」(02年)などの読み切り作品をシャッフルしてドラマを作ってみてはいかがですか? と思うくらいです。「リフォーム父さん」を作った時「リフォーム母さん」「リフォーム兄さん」「リフォーム姉さん」の“4さんリフォーム漫画”にしましょうと言ったんですけど、海野さんは「もう、これで終わり…読み切りだけです」と言って終わったんです。フラットな視線を大切にする作家さんなので、昔の作品を読んでくださると、うれしいですね。

 16年秋、冬の日本を席巻した「逃げ恥」「恋ダンス」ブーム…その裏には、ドラマが放送される5年前の11年から作品について話し合い、コツコツと原作漫画を作り続けてきた、女性漫画家と編集者がいた。二人三脚を始めて20余年。人生経験を重ね、女性としての生き方も違う2人が、多様な価値観を踏まえて物語、キャラクターを作り上げた。市井の人々と世相を見詰め、その時代ごとに自分たちが感じる“今感”を信じ、作品で表現し続けてきた2人の、創作活動の結晶が「逃げ恥」を国民的ドラマに押し上げたルーツ、要因と言っても、過言ではないだろう。【村上幸将】