第90回キネマ旬報ベスト・テン表彰式が5日、都内で行われた。

 宮沢りえ(43)が「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太監督)で、第76回の「たそがれ清兵衛」、第78回の「父と暮せば」に続く3度目の主演女優賞を受賞した。この日は「湯を沸かすほどの熱い愛」で娘を演じた杉咲花(19)も助演女優賞を受賞し“母娘受賞”となった。

 宮沢は東京芸術劇場プレイハウスで上演中の舞台「足跡姫」を終え、遅れて駆けつけた。「遅れて、すみません。失礼だなと思ったんですけれど、やはりこの賞は映画人にとってもファンにとっても特別な賞で、ぜひ参加させていただきたかった」と謝罪を交えつつ、キネマ旬報ベスト・テンが特別な賞であることを強調した。

 「湯を沸かすほどの熱い愛」は、宮沢と同い年の中野監督の商業映画デビュー作だった。14年の主演映画「紙の月」で東京国際映画祭と日本アカデミー賞で最優秀女優賞を受賞するなどし、次の主演映画が期待されていた中、自主映画で評価されてきたとは言え、世の中的には無名の1新人監督の作品への出演を決めた。その理由について、宮沢は次のように語った。

 宮沢 商業的な映画を初めて撮る監督と、一緒に仕事がしたかった。何よりも、脚本が本当にすばらしかったんですよね。ラストが衝撃的で、他の女優さんがやったら、嫉妬するだろうなと思ったくらい好きな脚本だった。たくさんの人たちに「次、何ですか?」と聞かれた時「中野監督」と言ったらビックリして…やったねと思った。

 宮沢がそう語った直後、両手に真っ赤な花束を持った中野監督が祝福に駆けつけた。宮沢と杉咲は、中野監督から花束を受け取り、満面の笑みを浮かべた。宮沢は中野監督について、あらためて聞かれ「現場で新しく生まれたものもあったし、コミュニケーションが取りやすかった。ただ、いいシーンになると、すすり上げて泣いてしまうのは、監督はもう少し冷静にならないと、と思いましたし、ご本人にも伝えました」と、中野監督にしっかりくぎを指しつつ、笑った。【村上幸将】