「今年はSMAPもベッキーもないからね。2月になったらネタ枯れだからいいよ」

 こんなことを言って、先月20日にしたインタビュー記事が、まだ載らない。

 まさしく、その20日に発売された雑誌「FRIDAY」に掲載されたお笑い芸人狩野英孝の淫行疑惑に始まり、翌週から女優江角マキコ引退、俳優松方弘樹さん死去と大きな出来事がめじろ押し。

 今月初めに奇跡的に1日だけネタが薄い日があって、デスクから「何か持ってないか?」と言われて、取材済みのインタビューを強力プッシュ。メイン原稿にするべくパソコンに向かったところで、藤村俊二さんの訃報が飛び込んで来て、それどころじゃなくなった。

 その後もアイドルグループ私立恵比寿中学の松野莉奈さんの訃報、女優清水富美加の出家・引退騒動とあわただしい日々が続いている。

 そんな中、手にしたのが、今月8日に発売された「無冠の男 松方弘樹伝」(松方弘樹/伊藤彰彦著)だ。松方さんが昨年2月に脳リンパ腫で倒れる前に、その生き様を語り尽くしていた。東映の剣劇スターだった近衛十四郎の御曹司、ということで勝手に京都生まれだと思いこんでいたが、東京・王子の病院で生まれたと初めて知った。中学1年の時に見ていたNHK大河ドラマ「勝海舟」のべらんめえ調の勝海舟役がどうりではまったわけだ。

 本来だったら、もっとインタビューを繰り返して出版する予定だったという。それでも“知られざる松方弘樹”の姿が鮮やかに浮かび上がって来る。元気でいてくれたら、父近衛十四郎と滋賀県雄琴で経営していたというソープランドの話や、11年に東京都暴力団排除条例によってテレビ局から事実上の“追放”になった裏側も詳しく知ることが出来たと思うと残念でならない。

 松方さんを追放したと言われるフジテレビの報道記者が、暴力団に車の名義貸しをした一連の疑惑が、まだ解明されていない今、その思いが強くなった。

 松方さんがイケイケのヤクザの若頭を演じて射殺される73年の映画「仁義なき戦い」(深作欣二監督)は、個人的には一番好きな映画だ。その「仁義なき戦い」の中で、お気に入りなのが、松方さんが菅原文太さん演じるヤクザにつぶやく次のセリフだ。

 「昌三、わしら、どこで道、間違えたんかの。夜中に酒飲んでると、つくづく極道がイヤになっての、足を洗うちゃる思うんじゃ。朝起きて、若いもんに囲まれていると、夜中のことは、ころっと忘れてしまう…」

 20年以上も付き合いのある芸能事務所の社長に記事のことで呼び出され、きつ~いクレームをつけられると「極道」を芸能記者に置き換えたくなる。後に続く「若いもん」は、すてきな俳優だったり、かわいいアイドルだったり、ノリノリの芸人だったり…。

 先日、7、8年ぶりに元AKBの女優前田敦子に話を聞く機会があった。「あんた、誰?」はないとしても「どちら様でしたっけ?」と言われるんじゃないかと、ビクビクしながら対面したら「お久しぶりです」と笑いかけてくれて、いやなことをころっと忘れてしまいました(笑い)。

 さらにうれしかったのが、今月19日、26日放送のBS朝日の情報番組「熱中世代 大人のランキング」(日曜午前8時)でグループ・サウンズ、ザ・タイガースの元メンバーの森本タロー(70)と瞳みのる(70)にインタビューできたことだ。記者が小学校に上がった、67年にデビューしたのがザ・タイガース。ジュリー沢田研二(68)をボーカルにGSでNO・1の人気を誇った。

 71年の解散後、タローこと森本さんは音楽プロデューサーとして西城秀樹や河合奈保子を手掛けた。日本テレビ「スター誕生」で大手芸能プロダクションの一員として、スター候補生の指名の札を掲げたりする活躍ぶりを解散後も見ることが出来た。

 一方、ピーこと瞳さんは、芸能を引退して慶大に進学。その後も慶応高校で教壇に立って、うかがい知ることができない人になってしまっていた。それが37年間の絶縁の後に、オリジナルメンバーと再会。13年に44年ぶりにオリジナルメンバーのザ・タイガースを復活させた。

 森本さんと瞳さんは、京都・仁和小3年の時からの付き合い。番組では子供の頃の話から、ザ・タイガース結成、上京とエピソードが盛りだくさんだ。解散時に小学3年生だった、あのころの自分に教えて上げたい。「あのね、ピー(瞳)は、すごいおしゃべりだよ。あんたよりもすごいかも」と(笑い)。