中川晃教(34)が昨年出演したミュージカル「ジャージー・ボーイズ」の演技で読売演劇大賞の最優秀男優賞を受賞した。先日、受賞を記念した会見が行われ、中川は「報われた思いがある」と素直に喜んだ。

 中川の歌声には定評があった。01年にシンガー・ソングライターとしてデビューした。翌02年にはミュージカル「モーツァルト!」の主役に抜てきされ、読売演劇大賞杉村春子賞、文化庁芸術祭賞新人賞などを受賞し、一躍脚光を浴びた。しかし、その後も多くのミュージカルに主演し、コンサートも行ったが、作品に恵まれなかった。

 「ジャージー・ボーイズ」で演じたフランキー・ヴァリに出会った瞬間、中川は「僕の代表作になるかもしれない」と思ったという。初めて挑んだ高音の領域に、さまざまな工夫と本番中もレッスンに通う努力を重ね、41公演を1人で演じきった。「奇跡ってあると思う。『中川に』ってお話をいただいたこと、これはやりたいと思うものとの出会ったこと、真剣に取り組むことで得てきたものが、自分の中に小さな、でも確実な自信となっている」。

 読売演劇大賞は24回を数えるが、ミュージカル俳優が最優秀男優賞を受賞したのは初めてという。「ジャージー・ボーイズ」は最優秀作品賞も受賞した。演出の藤田俊太郎は最優秀演出家賞にノミネートされたが、僅差で受賞を逃した。時期は未定だが、再演が決まっている。

 中川は「千秋楽で再演を発表した時の客席の雄たけびを覚えています。やはりお客さまに育てられていると思った」と話した。努力は必ず報われる、30代でようやく代表作を手にした中川の姿を見て、強く思った。