宝塚歌劇団星組の新トップ、紅(くれない)ゆずるが10日、兵庫・宝塚大劇場で、本拠地お披露目となる「スカーレット・ピンパーネル」の初日を迎え、抜群のコメディー・センスで、大阪人トップらしい本領を発揮した。

 最後の新人公演で初主演した思い出の「スカピン」が、トップ本拠地初作品。「汚してはならぬ作品。遊び心を入れて演じたい」と話していた通り、振幅のある演技で魅了した。

 物語は18世紀末のフランスが舞台。フランス革命後、革命政府により、貴族が次々に断頭台へ送りこまれる中、英貴族パーシー(紅)が「スカーレット・ピンパーネル」を名乗り、貴族を国外逃亡させる。

 恐怖政治に反発する正義の心と、正体を隠すために演じる“お調子者”貴族。紅は、2種類の顔を演じ分けた。とりわけ、浮かれた貴族役では、お笑いが大好きな大阪出身の紅らしいコメディエンヌぶり。初日前の通し稽古では、ピコ太郎の「PPAP」を取り入れるなど、外した芝居も演じてみせた。

 今作の潤色・演出を担当している小池修一郎氏はこの日、初日前に取材に応じ、紅の演技について称賛。「普通は、おもしろいことが好きでも、トップになると、宝塚の二枚目として『人から笑われたくない』と思い、格好よくキメたがるものですが、彼女のスタンダードは普通とは違うかもしれない」と言い、紅のパーシーは「おふざけの場面など、よく個性が出ていた」とほめた。

 凛々しい立ち姿から正義感をあふれさせたかと思えば、笑いのセンスを生かしたお調子者演技。紅らしい初日となったが、実は、裏では厳しい闘いもあった。

 小池氏によると「2日ほど前から(紅の)のどの調子が悪くなった」という。けいこでの発声量をセーブさせるなどし、初日へ体調を整えてきた。

 無事に初日を迎え、小池氏は「熱も出たと言っていたので、風邪のようですが、今日は全力を出せていた」と話していた。

 今作は、紅とともに、新トップ娘役に就いた綺咲愛里(きさき・あいり)も本拠地お披露目。綺咲は、紅演じるパーシーの妻で、人気女優のマルグリットを演じ、新コンビでの息の合った芝居運びも見せ、パーシーと対立する革命政府側の敵役・ショーヴランは礼真琴が好演した。

 宝塚大劇場での公演は4月17日まで、東京宝塚劇場は5月5日~6月11日。