作家伊集院静氏(67)が「さよならの力 大人の流儀7」(講談社)を出版した。累計170万部超の人気シリーズの第7弾。大学2年時の17歳の弟、32年前の妻で女優夏目雅子さん(享年27)、そして先月4日に友人のグラフィックデザイナー長友啓典さん(享年77)と、大事な人を亡くしてきた。このほど日刊スポーツの取材に応じ「大きな別れを経験した人に、あなただけが悲しいわけではないと伝えたい。そこで経験したものが力になり、その人の中で亡くなった人が生きていると伝えたい」と話した。

 11年の東日本大震災をきっかけに、封印していた夏目さんへの思いを書き始めた。「あふれるほどの悲しみを抱え込んだ人の痛みを和らげたかった。自分が雅子さんを亡くした時にどうだったかを語っておくことは、作家として必要なことなのかもしれないと思った」。現在の妻、女優篠ひろ子(69)も了解してくれた。

 長友さんとは長年、連れ添った。「30年ずっと女房代わりではないけど、お酒もゴルフも一緒。いろいろ学びました。もういないんだってことに関しては、まだ実感がない」。別れを経験することで人間は成長する。「その人と出会わなかったら、どんな人生だったか。その思いと年月が悲しみを和らげ、愛を深める。そして前に進む力になってくれると思う」と話した。【小谷野俊哉】