女優武田梨奈(25)が主演し15年、16年にBSジャパンで放送されたグルメドラマの新シリーズ「ワカコ酒3」が、7日から同局でスタートする(金曜午後11時半)。武田がニッカンスポーツコムの取材に応じ、新作の魅力、今まで語ったことがなかった撮影の舞台裏、そして女優業について存分に語った。

 「ワカコ酒」は、11年から「月刊コミックゼノン」(徳間書店)で連載中の新久千映氏の漫画が原作。酒飲みの舌を持つ26歳のOL村崎ワカコが、会社帰りにおいしそうなお店を見つけては立ち寄り、旬のさかなに舌鼓を打ち、女ひとり酒を堪能する姿を、同世代の武田が演じた。酒を飲みながら物思いにふけり、時に自分を見詰める心中をワカコがモノローグで語る形で描くスタンスが女性の共感を得て、女1人飲みブームの火付け役となった。

 -新シリーズの魅力は?

 過去2季とは、また違ったテイストになっていて、すごく面白いです。地方を描く回があって、石川県と愛媛県に行きます。それに、これまではワカコの視点で会社、友だち、お店だったりを描きましたが、今回は上司の岡田さんの視点からワカコを描く回もあり、若い世代から見た父親世代と、父親世代から見た若い子が描かれています。私は今、1番、それをテーマにしたかったんですよ。

 -なぜ、そこをテーマに

 「ワカコ酒」出演をきっかけに、1人で飲みに行くようになりましたが、最近、働いているサラリーマンんのお父さんたちって、こんなにも格好いいんだって、すごく思うようになりました。お父さんがお酒を飲んで家に帰ってきたら「また飲んで帰ってきて」とか「またお酒のにおいして」って思ったりする娘さんって、少なくないと思うんです。でもサラリーマンたちって、朝から晩まで働いて嫌なこともたくさんあるけれど、お酒を飲んで、その場でストレスを発散して家では、そういうところを見せないんだと思うんです。

 -気付いた出来事がある

 電車に乗っていて、たまにサラリーマンの方が、私の肩で寝ちゃうんです。そういうのを最近、いとおしく思えてしまうんですよ(笑い)前までは「お酒のにおいがする!!」と思っていたんですけど、今は「お仕事で疲れて、お酒を1杯、飲んで帰ってきたんですね。お疲れさまです。私の肩で良かったら寝てください」と思うくらいになったんです。サラリーマンのお父さんたちって、本当に格好いいと思う気持ちをドラマを通して伝えたいですね。

 -台本にも描かれている

 ワカコは岡田さんに。いつも叱られて「岡田さんって、もう…」と思ったり、「お父さんも、いつもお酒を飲んで帰ってきて文句ばっかり…こういう大人になりたくない」などと思っているんですが、岡田さんも「最近の若い子は、叱ったら、すぐに膨れっ面して文句ばっか」と思っている。世代を超えての心のリンクが、台本を読んだ時に面白く、今までとは違うと感じました。演じる上で日々、お父さまたちに感謝しなきゃ、って思いましたね。

 -その他の見どころは

 ワカコが自分の世界に入るシーンが多いんですけど、今回は結構、他のお客さんとコミュニケーションを取っているので、積極性を持てたりなどワカコの成長も見られますね。食べ物も飲み物も深くなっています。監督が脚本にも参加して、原作にプラスしてオリジナリティーも増えています。次、どんなお酒とさかなが出てくるんだろうと、ギリギリまで分からないので、楽しみを抱えながら撮影に入っています。あとオープニングを撮ったんですけど、いつもいただく絵コンテも何の前情報もなく行ったら「主題歌を流すので自由に踊ってください」と言われてビックリしました。

 -踊った?

 とっくりから野菜まで小道具が山積みにあって「好きなものを取って、自由に楽しく踊ってください」って言われて…。30回くらい、主題歌を流して、踊ったり歌ったりしましたね。今までは、割と最初の段階から「テーマはこうです!」ってボンっといただいていたんですけど、今回は台本をギリギリまでいただけないんです。何が出てくるんだろうというのが、また楽しみの1つなんです。事前まで何も知らされず…というパターンが多いんですが、多分、過去2季やってきて、ワカコ像が自分の中でしっかり出来ているからこそ、監督やスタッフが「次の課題はこれだよ」ってポンッと投げてくれているんだと思っています。

 -出来上がったワカコ像を壊す意図があるのでは?

 そうなんですよ。この間も、とあるおつまみに、ちょっとわさびが入っているという設定なんですが、監督がわさびを、わざと倍増していたんです。本番で、すごいツーンときて、涙が出てきちゃったんですよ。涙が抑えられなくて、カットがかかった時に「わさびが濃すぎて、こんなリアクションになっちゃってもう1回お願いします」と言ったら「それ、狙っていたから、いいよ」って。台本にないことを、監督がたまに入れてくるんですけど、リアクションは面白いと言ってくださいました。

 -撮影中、本当に飲む?

 今回は結構、飲んでいます。いつもは、ほろ酔いくらいなんですけど、焼酎のロックを、ひたすら飲む回があって。最初はアップのところだけ本物でいくという話だったんですが、お酒を開けるところから一連の流れを撮るシーンで、中身を変えられないので全部、焼酎を飲みました。すごく酔ってしまって監督に「酔っているでしょ?」って言われました。顔も真っ赤になって、目もトロンとしていたんですけど「それくらいが面白いから撮っちゃおう!!」って撮りましたね。

 -ワカコに愛着が湧く?

 ワカコに影響されまくりなんですよ。今までは“爆食タイプ”で、食べ物をいっぱい並べて本当に食べていたんですけど…今は1つ、1つを味わうようにしています。毎回、お店を出る時には、1つ、感謝の気持ちを述べてから帰ることを意識しています。ワカコも、1日を見つめ直して「今日はこういう日だったけど、いいこともあったんだよ」と1つ、プラスのことをつぶやいて帰るんです。嫌なことがあったから飲んで忘れて寝るぞ、じゃなくて最後、必ずポジティブな気持ちで、気持ち良く帰ることを意識しています。

 次回は、これまで明かしたことがなかったという「ワカコ酒」撮影の裏側を大公開する。【村上幸将】