クレイジーケンバンド(CKB)横山剣(56)が、地元・横浜を舞台に自分自身を演じた初主演映画「イイネ!イイネ!イイネ!」(門馬直人監督、6月24日公開)が完成した。本牧育ちの3人の少年の成長、挫折、友情を描く、虚実ない交ぜのストーリー。CKBは今年結成20周年。今の思いを聞いてみた。

 同映画は、かつては米軍住宅が広がるなど異国情緒漂う横浜・本牧で育った3人の少年が織りなすストーリー。1人はミュージシャンとなった横山剣、その人。あとの2人は中野英雄演じるCKBのマネジャーと、伊原剛志演じる横浜の暴力団員。大人になっても、3人の友情は健在だった。「自分は音楽しかないので演技とかは全く分からない。最初は嫌だって言ったんだけど、楽曲が有効に使えるような内容だったんでね。いざ決まってからは、結構いっぱいリクエスト出して、脚本もちょっと変えてもらった。その辺の湯加減みたいなのをね」と振り返る。

 横山が演じるのは、CKBの自分自身。横山がライブなどで披露する決めぜりふ「イーネッ!」にかけた作品タイトルだ。「自分自身の役だけに、実際とのギャップが面白い。虚実ない交ぜなので、ちょっと異次元にワープする感じがある」。全編にCKBの曲が流れる。「ビートルズでも、そういう映画があったり、グループサウンズのスパイダースとかでもね。本当の部分と作りものが交ざって、夢の中みたいな感じになりました」と言う。

 ほかのキャストも豪華だ。AKB48を卒業したばかりの小嶋陽菜、菜々緒、大鶴義丹、山口智充、パンツェッタ・ジローラモ。そして、横山が、韓国女優イ・アヒョン演じる韓国人ヒロインを暴力組織から守るために預ける、物語のキーパーソンでもある酒場のママを演じたのが秋吉久美子(62)。「最初のロケが秋吉久美子さんとの絡みだったんですよ。いきなりハードルが高いスタートだったんで(笑い)。そしたらすごく褒めてくれて、うれしかったですね」と笑う。

 恋模様も描かれるため、お色気シーンの期待も高かった。「ぬれ場は『それだけは勘弁してくれ!』と。好感度落ちるのでやめてくださいと。女性ファンが嫌がると断りました」と笑う。自分の演技については「自然体でやっただけ。せりふとかは滑舌が悪いから(笑い)。ただ、音楽が映画全体の中で生きて、イイ感じになりました」。

 56歳になった。「子供の頃は28歳くらいが大人だと思っていた。それを大きく超えて、異次元にいるみたいな感じですね。でも岩城滉一さん、堺正章さん、加山雄三さんたち、先輩がバリバリ活動してらっしゃる。加山さんなんか80歳ですよ。だから僕もいつまでも若造、チンピラでいられる。老け込むどころか、成長できると思っています」。

 横山剣のチャレンジは、まだまだ続く。【小谷野俊哉】

 ◆横山剣(よこやま・けん)1960年(昭35)7月7日、横浜生まれ。81年バンド、クールスRCのボーカルとして「シンデレラ・リバティ」でデビュー。84年ダック・テイルズ結成。90年ZAZOU結成。91年CK’s結成。95年にダブルジョイレコーズ設立。97年にクレイジーケンバンド結成。02年発売のシングル「タイガー&ドラゴン」が05年、同名のTBS系連ドラのオープニングテーマに起用されヒット。趣味は車とバイク。175センチ。血液型B。

 ▼映画「イイネ!イイネ!イイネ!」 本牧で育った3人の幼なじみケン(横山剣)ドブオ(伊原剛志)トニー(中野英雄)。ケンはミュージシャン、ドブオは高倉健のような俳優になる将来の夢をもっていた。大人になって、ケンはCKBを率いるミュージシャンになり、トニーはそのマネジャー。ドブオは暴力団員になっていた。CKBの夢だった横浜スタジアムコンサートが決まった。だがその夜、ケンは暴力団員に追われる女(イ・アヒョン)をかくまい、恋に落ちる。そして、幼なじみの3人が事件に巻き込まれていく。