音声だけで情報を伝えるラジオで、声優の演技と効果音でアニメを作る異色の企画として、16年8月の放送時に話題となった、NHK FMの特番「迷宮 画のないアニメ館」が、月1のレギュラー番組として帰ってくる。

 29日に「画のないアニメ館」(毎月最終土曜日午後11時から)がスタートする。

 キャラクターに命を吹き込む、声優の匠(たくみ)の技を、朗読劇など表舞台で披露する機会も昨今、増えたが、それを生放送するのが「画のないアニメ館」だ。

 放送前にホームページで台本を公開。前、後半それぞれに空欄を設ける形でリスナーにお題を発表し、投稿を募る。声優陣は放送当日に、投稿により空欄が埋まった台本を初めて読み合わせて本番に臨む。事前に公開した台本にはないアドリブを披露するのが、声優の腕の見せどころだ。

 さらに驚きなのは、リスナーの投稿を生放送中も受け付けて、台本がアップデートされることだ。松井修平エグゼクティブプロデューサー(EP)が、前半部終了後の声優のトークとリスナーからの投稿をチェックし、いいアイデアを「コメディーお江戸でござる」などで知られる脚本家の清水東氏に伝え、同氏が生放送中に台本を書き直す。終了30分前に後半部の台本が最終確定し、生放送中に渡された台本を声優がその場で演じる。

 昨年8月に特番が放送された際は、声優、脚本家のプロの技を体感できる企画の斬新さに、ネット上で「神番組」など称賛の声が相次ぎ、1万件超の反応があったという。

 レギュラー出演する声優の徳井青空、松井EP、清水氏が意気込みを語った。

 徳井 すごく面白い、もう1回やりたいと思っていたのでレギュラーで帰ってくるのが、すごく、すごくうれしいです!! 生でお芝居する私たち声優も、緊張感がありながらもライブ感を楽しみました。いつもはアニメの完成後に知る音楽、効果音も生でつけてくださるので新鮮。スタッフ、キャスト、脚本家が一丸となって作るドタバタが、すごく楽しい環境なんです。

 松井EP ラジオで、アニメってないなぁと。なぜか…それは、アニメには動画という意味もあるので。だけど、画がない“アニメっぽいこと”になれば、たがが外れて、あらゆるアドリブ、発想が出来ることに気付き、企画を思い付きました。リスナーからの投稿を元に、面白い要素を、声優が、ああだこうだ言いながら面白く仕立てて、それを脚本の清水さんが即興で書き上げ、そのキャラクターに声優が命を吹き込む。前回、声優さんたちが「ミュージカルも面白そうね」と言って、僕らの方を見たんです。それで、僕が一生懸命、原稿を書いている清水さんに、「ミュージカル入れますよ」って言ったら、「ええっ」って…。その時の清水さんの顔が、すごく泣きそうで面白かった。

 清水氏 現場がグチャグチャになって、それでも最後にまとまるのが、声優さんの腕のあるところ。やっていて面白い。僕の原稿が間に合わないというのは、リスナーは、さほど面白いとは思わないと思う。声優が演じるところまでいかないと、不完全燃焼になる。僕のバタバタは副産物的な面白さで、やはり声優さんの仕上がりを聴いていただきたい。(原稿を書くスピードは)そうでもないし、いちいち吟味して書いていたら絶対に間に合わない。でも悩んでいる暇もない。

 -脚本の修正で1番、困るのは?

 清水氏 やっぱり、どこかに寄り道するとか、違うところに行くとか…話が横にそれるのが大変ですよね。「一堂、温泉に入る」とかいきなり言われると、その場面がないので。

 松井EP NHKなので、想像できるものはいいんですけど事実に反するものは排除しないといけない。

 -NHKは「セカンドバージン」などドラマでもセクシー路線で攻めているが、NGラインはどの辺か?

 松井EP NG!? 下ネタもギリギリ…前回の放送では、キャラクターが温泉に入り、腰フリフリ(で倒す技)くらいまではOKでした(笑い)基本的に放送コードの中で、想像が出来るもの。「裸になった」と言うのは、ラジオだからOK…画がないから、その辺まではいけると思います。

 徳井 前回は、リスナーのアイデアがすぐに生かされ、私が演じたケシザベスピーチのセクシーなシーンがあった。物語に本当はなくていいことでも、みんなで真剣にやる、良い意味でのばかばかしさが面白かった。そのシーンについて「大丈夫か」という声が(インターネットに)あふれ返ったのが印象的でした。

 -演じている途中にアドリブでアイデアや新キャラを自ら出して、清水さんを困らせてみては?

 徳井 難しいと思うんですけど、楽しいとは思う。リアルタイムでやっているからこそ、アドリブがドンドン生きていって…どうしてもやりたいことが出てきたら(清水氏を)困らせるかも知れませんね(笑い)

 清水氏 どんどん、追い込んでください(笑い)

 29日夜には、生放送中のスタジオに“潜入”しての生リポート、翌30日には詳細な“密着ドキュメント”もお届け予定。お楽しみに!!【村上幸将】