3月1日に膵臓(すいぞう)がんで亡くなった歌手ムッシュかまやつさん(享年78)の「お別れの会」が2日、都内で行われた。06年8月の堺正章(70)の還暦パーティー以来、約11年ぶりにバンド、ザ・スパイダースが再集結。誰からも愛された元メンバーを明るいトークと音楽でしのんだ。オリジナルメンバーの再結成は約20年ぶりとなった。

 「『しのぶ会』だとまだ時間がたっていない。『お別れ会』だと未練が残っている。だから『かまやつひろしと共に』で!」と堺が明るくあいさつ。井上順(70)も「遅刻魔だから『ようっ!』と現れそう」と、スパイダースからただ1人、天国へ旅立ったメンバーに呼び掛けた。

 “スパイダース葬”らしく、ヒット曲の数々が披露された。デビュー曲「フリフリ」から「サマー・ガール」「ノー・ノー・ボーイ」へ。かまやつさんが作詞や作曲に関わった曲ばかりを選んだ。ノリの良い「バン・バン・バン」では、会場の約1000人が手拍子で盛り上げた。その後「あの時君は若かった」を全員で合唱。締めでは、「どうにかなるさ」を熱唱するかまやつさんの生前の歌声が、バンド演奏に合わせ会場に響き渡った。

 いつも笑顔を絶やさなかったかまやつさん。「敵がいないんですよ、あの人は」と堺が言えば、バンドのリーダーで大手芸能プロ、田辺エージェンシー社長の田辺昭知氏(78)も「近い関係すぎて言えなかったが、あらためて感謝しています」と笑顔で話しかけた。

 祭壇には愛用のギター7本、ニット帽、たばこが置かれ、バラやかすみ草など5000本以上の花で飾られた。その中央には09年のレコーディング時の写真を置いた。いつもと同じ笑顔のかまやつさんが、仲間たちとの最後の別れを見つめていた。【松本久】

 ◆ザ・スパイダース 61年に田辺昭知氏が結成。田辺氏(ドラム)かまやつひろしさん(ギター)加藤充(ベース)大野克夫(オルガン)井上尭之(ギター)堺正章(ボーカル)井上順(ボーカル)の7人。65年に「フリフリ」でデビュー。「夕陽が泣いている」「あの時君は若かった」などのヒット曲でグループサウンズ人気の礎を築いた。堺と井上順の軽妙な掛け合いによるコミカルトークも人気だった。70年に解散した。