昨年公開の仏映画「世界の果てまでヒャッハー!」は、ブラジルのリゾート地を舞台にした「冒険コメディー」だったが、これが笑いのツボを心得た作品で、すっかりはまってしまった。

 最近のハリウッド映画の喜劇は速射砲のようなトークの方に重きが置かれていて、そこにはどうしようもない言葉の壁がある。一方、最近のフランスのコメディーはとにかくよく動く。

 7月公開の「ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~」は「-ヒャッハー」のニコラ・ブラム監督の作品で、暴走車を題材にした言わば「走る密室もの」だ。完全自動制御の未来車でバカンスに旅立った一家だが、肝心のコンピューターに不具合が生じて、走る棺桶のような状態に追い込まれる。

 おバカなハイウエー・パトロールが登場したり、居合わせたギャングの恨みを買ったり…前作同様、期待通りの笑いのポイントがちりばめられている。

 さらにはパニック状態の中で家族同士の秘密も明らかになり、密室は気まずい空気になって…重層的な笑いに本気のアクションも加わって見応えがある。

 8月には「ロスト・イン・パリ」が公開される。こちらは本業「道化師」のカップル、ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードンが監督・主演。職人芸を極めた動きに思わず見入ってしまう。チャプリンやキートンの時代を思い出させる作品だ。

 毛色は違うがともに動きで魅せ、笑わせる。世界共通言語の「映画」の王道を行く仏2作品は、今年の夏のお薦めだ。