落語家柳家花緑(45)が、子供の頃は「発達障害」だったことを著書「花緑の幸せ入門」(竹書房、8月4日発売)で初告白する。人間国宝5代目柳家小さんの孫で、22歳で真打ち昇進したが、漢字の読み書きが苦手で通知表も1か2。教室ではじっとしていられず、いつもしゃべっていたという。このほど日刊スポーツの取材に応じ「おしゃべりのおかげで、落語家としての今がある。この障害に感謝してます」と話した。

 花緑は小、中学生の頃を「落ちこぼれでした」と振り返る。小1で授業についていけず、テストでは0点を取った。宿題をやらず忘れ物も多かった。「漢字の読み書きも苦手で、通知表も音楽と美術以外は1か2。教室でもじっとせず、しゃべってばかりいたので、先生に往復ビンタされたこともあった。学校で身の置きどころがなく、行くのが嫌だった」。

 自分が発達障害と知るのは、13年のテレビ出演がきっかけだった。「1」が並ぶ中学3年の通知表を公開したところ、視聴者から「息子も花緑さんと同じ障害です」とメールが届いた。「その時は自分が発達障害と思っていなかったけど、よく聞いてみると、同じだった。初めて言われた時はショックだったけれど、今は知ってよかったと思う」。

 初めてちゃんと本を読んだのは、二つ目になった18歳の時だった。落語は本ではなく、師匠からの口伝やテープで覚えたので、今では持ちネタは190ほどある。「おしゃべりのおかげで今の自分がある。この障害だったことを感謝しています。ただ、空気が読めず、自分の話ばかりすることもあるので、行き過ぎないようにしてます」。

 過去の著書は聞き書きが多かったが、今回は自分で書いた。障害告白だけでなく、スピリチュアル(精神世界)にはまったことや、「笑う門に福来る」のことわざから幸せのあり方にも深く踏み入っている。「軽やかに笑っていくことが大事、一緒に幸せを考えていこうという本です。障害やスピリチュアルまで、自分のすべてを正直に書いた。でも、そうしないと前に進めないと思った」と話した。【林尚之】

 ◆柳家花緑(やなぎや・かろく)1971年(昭46)8月2日、東京生まれ。祖父は5代目柳家小さんで、9歳から落語を始め、中学卒業後の87年に祖父のもとに入門。94年、戦後最年少の22歳で真打ちにスピード昇進した。俳優としても舞台やドラマに出演。10月27、28日に落語会「花緑ごのみ」を東京・霞が関のイイノホールで開催。「堪忍袋」「柳田格之進」ほか1席を予定。

 ◆発達障害 脳機能の発達が関係する先天的な障害の総称。成長過程で発見されることが多く、学習障害、注意欠陥・多動性障害、自閉症障害、アスペルガー症候群などがある。花緑の場合は学習障害の中でも、知的発達に遅れはないが、教育段階に見合わない読み書きに困難がある識字障害(ディスレクシア)という。