8月2日、フジテレビ系特番「FNSうたの夏まつり」が放送された。

 今回は「~アニバーサリーSP~」と銘打って、10周年や25周年など、いわゆる「周年」のアーティストを特集するチャレンジングなテーマだった。

 平均視聴率は、第1部(午後7時から同8時50分)で7・7%、第2部(午後8時50分から同11時18分)で9・7%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)。一定の結果を残したといっていい。デビュー50周年の森山良子とマイク真木のデュエットや、森高千里、工藤静香、岸谷香という30周年トリオの共演など、「ここだけ感」のある企画は、新鮮味があった。

 ただ、気になった点もある。

 たとえば、曲を披露する時間、つまり「尺」だ。特に、最も後輩にあたる「5周年組」については、個人的に物足りなさが残った。

 「5周年」で出演したのはA.B.C-Z、乃木坂46、EXILE THE SECOND、GENERATIONSの4組。いずれも、約3分間という時間の中で、2曲を披露した。この構成は「FNS」以外の特番でもしばしばあることだが、レコード会社関係者は「以前は、1曲あたり2分や2分半という尺がスタンダードでした。3分で2曲というのは比較的短いし、曲の魅力を伝えきるのは難しい部分があるのではないでしょうか」と話す。

 「FNS」に限らず、音楽特番では、番組制作側とアーティスト側(レコード会社、所属事務所など)のせめぎ合いがつきものだ。番組としては、視聴者へのアピールや、分かりやすさを求めて、有名な代表曲を歌わせたいことが多い。

 一方、アーティスト側はプロモーションのために新曲を歌わせたいし、アーティストによっては「この曲は今は歌いたくない」などさまざまなこだわりも生じる。それぞれの思惑が交錯する中、交渉や打ち合わせを何度も重ねて、やっと放送に至る。

 今回「5周年」の4組は、いずれも新曲と、デビュー曲などの代表曲の2曲を歌った。1曲あたりの尺は約1分半。落としどころとしては妥当なのかもしれないが、どっちつかずの中途半端な結論にも見える。また、結果的には周年以外にもゲストとして多くのアーティストが登場し、「周年組」よりもフォーカスされている時間帯も短くなかった。もっと「アニバーサリー」に特化した番組構成も可能だったのではないだろうか。

 フジテレビ関係者は言う。「周年という企画性質上、基本的には後輩よりも先輩を立てる必要がある。同じ周年のアーティストは基本的に同じ扱いにしなければならなかったりと、しがらみも多かった」。番組制作側としては、最善を尽くした結果のようだ。

 もっとも、歌唱時間は限られていたが、光る演出も多かった。GENERATIONSの「PIERROT」のサビでは、中央から全体を映す7人のショットを多く使い、パフォーマー5人を中心とする、持ち味のパワフルなダンスをしっかり見せた。乃木坂46「ぐるぐるカーテン」では、横一列になったメンバーたちを1人ずつアップで次々と映す思い切ったカメラワークで、ルックスレベルの高さを前面に押し出した。

 「FNS」は1974年(昭49)から続く歴史ある音楽特番だ。今回、これまでありそうでなかった「周年にこだわる」というテーマ設定はある意味斬新で、話題性もあった。ただ、同時に、やるならもう少し思い切って割り切ってほしかった、という個人的な感想もある。

 各局の音楽番組が減っている中、同番組がアーティストにとってもファンにとっても貴重な存在であることに変わりはない。次回以降の試みに注目していきたいと思う。