毎年恒例の「八月納涼歌舞伎」が歌舞伎座で上演中だ。第2部「歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」は、歌舞伎界の近い将来を見るようで、わくわくした。市川染五郎、市川猿之助演じる弥次喜多コンビがなぜか歌舞伎座でアルバイト、舞台裏で殺人事件が起こる、という大騒動を描いた。

 若い役者が本当にたくさん出ている。20代では、中村萬太郎、坂東新悟、坂東巳之助、中村隼人、中村児太郎らが出演。10代も多く出演しており、染五郎の長男松本金太郎、市川中車の長男市川団子、中村扇雀の長男中村虎之介、片岡仁左衛門の孫片岡千之助らが奮闘している。

 劇中劇で「義経千本桜 川連法眼館の場」、通称「四の切(しのきり)」という場面が出てくる。この芝居の狐忠信は、猿之助の当たり役だが、劇中劇では隼人と巳之助がちらりと演じている。2人の狐忠信の姿に客席が沸いた。団子がせりふで「いつかやりたいなあ」と言うと、拍手が起こった。頭の中に「いつか」が思い浮かんで、楽しみになった瞬間だった。

 初日前日、扇雀が「第2部は、役者さんの発掘になる舞台」と話したように、次世代、次々世代のひいきを見つけに行くのもいい。個人的には、美少年と評判の金太郎、伸びやかな声としっかりした芝居を見せる団子のコンビが、ほっこりポイントになった。