会社に入って30年近くなるのだが、初めて夏休みを取った。

 と言っても例年、夏休みを取らずに暑い中、働いているというわけじゃない。まとめて5連休を取ったのが初めてということ。いつもは2連休をとびとびで取ったりしていたのだ。

 5連休は2日ずつ埼玉の実家に帰り、間の1日だけ、東京へ戻り、六本木の国立新美術館で「ジャコメッティ展」を見た。若い頃は埼玉の実家から1時間かけて会社まで通っていたのだが、20年ほど前に転勤で地方に行ってからは、年に5日も泊まらない。

 倒れて退院したばかりの父親と、それで情緒不安定になった母親に親孝行をしてきた。「オレは築地に30年も勤めているんだから任せてくれ」と、何の根拠もない自信を見せ、3回も料理を作った。といっても、カレーライスとしゃぶしゃぶという、初心者コース。それでも最後は、嫌がる母親を説得して、天ぷらにチャレンジ。「築地に長年勤めて天ぷらを揚げられる男子」という謎のブランディングに成功した(笑い)。

 久しぶりにゆっくり過ごす自宅では読書ざんまい。そして連日、親孝行代わりにスムージーを作った。今回、びっくりしたのは、埼玉の実家で毎日、ゴーヤーが5、6本、プチトマトも3日ごとに20個くらい収穫されていたことだ。昔は芝生やバラが彩っていたはずの実家の庭が、すっかり農園となっていた。温暖化恐るべしだ。ちなみに実家そばのスーパーでは、ゴーヤーが1本、100~170円で売られていた。

 あとは私の代わりに、実家の跡取り娘となっている犬の散歩。今まで、チワワの「ちーちゃん」だとばかり思っていたのだが、「ティアラ」というのが本名で「ティーちゃん」だという、衝撃事実が判明した。排せつ物を処理する袋を持って、リードを握ってお供をするのだが、小さいくせに街で出会うデカい犬に飛びかろうとする。よくペットにメロメロの人間を見てあきれ返っていたのだが、メロメロになってしまいました。

 休みの間に読んで感銘をうけたのは、もちろん日刊スポーツ。そして「倍賞千恵子の現場」(倍賞千恵子)「羆嵐」(吉村昭)「定本 後藤田正晴:異色官僚政治家の軌跡」(保阪正康)「胡椒息子」(獅子文六)「織田信長の家臣団-派閥の人間関係」(和田裕弘)の各書。

 日刊スポーツと合わせて読むと、よりいっそう心に染みること間違いなし? かもしれない。