宝塚歌劇団宙(そら)組トップスター、朝夏(あさか)まなとが25日、兵庫・宝塚大劇場で、サヨナラ公演「神々の土地」「クラシカル・ビジュー」の千秋楽を迎え、投げキッスで本拠地に別れを告げた。

 02年入団から花組で育ち、12年に宙組へ移り、15年2月に同トップ就任。劇団最古の「花組男役」としての素地から、最後の大階段で選んだのは、男役の象徴・黒えんびだった。キザでスタイリッシュ、それでいて「宙組の太陽」と称された抜群の笑顔で、ファンを魅了してきた。

 いったん幕が下りてから、カーテンコールは5回を数え、その5回目。朝夏は「ある人から(投げキッスを)やったら、盛り上がるよと言われ、やってみたら、まさに待ち望んでくださっている雰囲気だった」。左右に加え前方と、3カ所に投げキッス。いったんはけた後、再びカーテン前に現れ、2回の投げキッスを「おかわり」した。

 「組子も、ファンの方も、みんな笑顔で今日を迎えられて幸せです。にこやかさにつられて、グッとこみあげる場面もありましたけど、自然と私も笑顔になりました」

 笑顔でサヨナラ-。思い描いた理想の「卒業式」だった。みんなを笑顔にするため、トップの意向で構成される最後の「サヨナラショー」には、今年2月の本拠地作で披露したお祭りナンバー「YOSAKOI ソーラン」も入れ込んだ。

 客席と一体となって「ソーラン 宙組」と掛け合うお祭りソングは、笑顔でのサヨナラに「絶対に欠かせないと思った」と振り返った。「客席の笑顔が見えました。みんな、笑ってくれていた」と安心し、ファンには「ありきたりな言葉しか浮かばなくて、心苦しいですけど、本当に幸せです」と感謝した。

 「(東京公演千秋楽の)11月19日まで、男役として生きられる日々を大切に過ごしたい」と言い、退団のその日まで全力で進みたいと約束もした。

 「下級生時代に見た卒業する先輩のかっこよさ」にひかれ、最後は黒えんびに赤いバラで別れを告げると決めていた。その通り、この日は、同期の星組トップ紅(くれない)ゆずるや、組メンバーから受け取った赤いバラを胸に、宝塚大劇場から足を踏み出した。

 また今回、芝居で朝夏の相手役ヒロインを務め、「池田泉州銀行イメージガール」にも就いていた伶美(れいみ)うらら、ら、娘役4人も、朝夏と同じ11月19日付で退団する。