岸部一徳(70)が照れていた。出演中のテレビ朝日系ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」に関するインタビューの時のことだ。同ドラマ主演の米倉涼子(42)について、話を聞いた。シリーズ全5作で共演し、米倉が「芸能界の父」と慕う岸部に、その人柄を語ってもらったかったからだ。

 その口から出た言葉は、高視聴率連発の大人気ドラマの主役を張る米倉を単純に褒めるだけのものではなかった。まず魅力について「自分の中で、彼女の魅力っていうのはこういうもんだなっていうのはあるけど、1つの言葉では表現できない」と前置きし、続けて言った。「正義感や、責任感が強くて、挑戦することがすごく好き。そして、他者を思いやる優しい人で、周りを楽しくさせる。ちょっと子どもみたいな、少女みたいな、純粋なところもそのまま大事に持っている人。そういうのを合わせると、彼女の魅力になるんですよ。それを短く言うと、楽しい人、優しい人になるけどね」。

 大きなプレッシャーと戦う米倉を思いやる一面も見せた。「ドラマの成績がいいほど、プレッシャーがあるし、次も良くしないといけないというのがある。彼女は、視聴率競争という宿命と、ドラマの内容の良さ、その2つ戦いの場所を持っているし、それをよく分かっている人。(ドラマを)続けるっていうのは、ものすごく難しい。彼女も自分の中だけで考えているものがあると思います。それは何となく、そばで見ていると分かる気がする」。

 真剣なまなざしでゆっくりと、言葉を選びながら言う。「いつも、これが最後かも分からないという気持ちで頑張らないといけない。いつか最後の時が来るので、最後も1回目より面白いもので終わりたいというのは彼女の中にはあるんじゃないですかね。面白いドラマっていうのは、見る人にどう伝わっているか毎回チャレンジする。彼女はそういう中で生きている人。そういったことを意識しているということが大事なんですよ」。

 第5シリーズのクランクイン前から、岸部は、米倉や、共演の西田敏行らと飲みに出かけていたという。長く現場で苦楽を共にし、重圧と戦いながら親交を深めてきた。父のように慕われる岸部から見た米倉の姿は、単純に「娘」とは言い切れない、複雑なものだった。「現場に来るのも楽しいし、仕事という意識よりも、ちょっと違うものが入っているのはある。仕事だったら終われば終わりだけど、それだけじゃないものをちょっと感じています」。

 そこまで話すと、なぜか急にモジモジしたような素振りで、照れくさそうに言った。

「ある意味で言うと、米倉涼子さんという女優さんのファンということ。西田(敏行)さんと時々話しているけど、僕らがこの年になっても、ちょっと恋する感じを持てるような、珍しい魅力のある人ですね」。

 大ベテランたちをとりこにする。恋する少年のようなその表情が、とても印象的だった。