お笑い芸人まとばゆう(32)にインタビューした。

 まとばは昨年末、女性お笑い芸人ナンバーワンを決めるコンテスト「女芸人No.1決定戦 THE W」に挑み、5組のファイナリストに残った。ほぼ無名だったまとばだが、唯一の音ネタで決勝進出を果たしたのだ。この活躍が大手芸能プロダクション・太田プロの目に留まり、今年元日から所属となった。チャンスを自らので手でつかみ取る形となったのだ。

 日大芸術学部大学院音楽芸術作曲科修了という高学歴だが、そんな彼女がなぜ芸人となったのか。「音楽の仕事がしたかったので、事務所にデモテープを送ったけどどこからも反応がなかった」。だが、音楽絡みの仕事にこだわったまとばは、オーディション雑誌の「あ」から軒並みデモテープを送った。その結果、前所属事務所アミー・パークから「音楽ができるなら笑いもできる」と勧められ11年、ピアノ芸人としてデビューした。

 しかし、所属事務所が決まったからといって順風満帆ではない。それはゴールではなく、スタートなのだ。「本当に苦労しました」と笑顔で振り返ったが、何が1番つらかったのか。「オーディションに行けなかったことです。実力のない私に人手を割ける状態ではなかったので」。

 そんな状況で相談にのってくれたのが、事務所の先輩じゅんいちダビッドソン(42)だった。「じゅんいちさんは本当にやさしい人で、よく相談にのってもらいました」。紆余(うよ)曲折を経て、まとばはチャンスを求めて独立の道を選んだ。フリーになったまとばを陰で支えたのも、じゅんいちダビッドソンだった。「じゅんいちさんの紹介でいろんな事務所の人に会えたので、本当に感謝しています」。

 だが、紹介されたからといって所属できるわけではない。そんな崖っぷちの状況で挑んだのが「THE W」だったのだ。「THE W」の裏にはまとばの「なんとかチャンスをつかみたい」という強い決意があったのだ。そして、その手でチャンスをつかんだ。

 「ピアノ芸人」という存在に加え、持ち前の明るさと独特の着眼点が魅力だ。「このインタビューが再スタート最初の仕事なんです!」。そう語りかけた目の輝きに希望を感じた。まだ、新生まとばゆうとしてスタートラインに立ったばかりだが、その初仕事に関われたのも「縁」だと思う。まとばの成長をウオッチしていきたい。