歌手北島三郎(81)の次男大野誠さん(51)が、3日に東京都調布市の自宅で遺体で発見されていたことが7日、分かった。死因は心不全とみられる。ミュージシャンとして活動。作詞作曲家として父の曲も手掛け、北島の関連会社役員も務めていた。この日夜、都内で会見した北島は、最愛の息子の孤独死に「寂しいし、つらい」と涙で声を震わせた。

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 会見に同席した北島音楽事務所社長で大野さんの兄、大野龍氏によると先月22日に電話で話して以来、大野さんと連絡が取れなくなった。同事務所所属の歌手、北山たけし&大江裕のデュエット曲の制作中で「創作活動に入るとこもって集中し、連絡が取りずらくなる」(龍氏)というが、あまりにも長期間だったため今月3日、警察と一緒に安否確認で自宅に入った。

 龍氏によると「まさに家の中でパタッと倒れていた」。救急車を呼んだが心不全による死亡だったという。大野さんは同所で1人暮らしし、自宅兼音楽制作用スタジオにしていた。警視庁調布署によると、大野さんは服を着たまま倒れていたといい外傷もなし。孤独死で、死後約1週間経過していたとみられている。

 7日夜会見した北島は涙をぬぐい「大事な、大好きな、かわいいわが子に先立たれるのはつらい。息子であって、良き私の相方でもあった。ある意味ではとてもいい音楽の仲間だった」と最愛の息子を惜しんだ。

 1966年生まれ。幼少のころからギターを習うなど父と同じ音楽の道を志した。リードボーカルを務めるロックバンド「1st BLOOD」を結成し88年7月、シングルデビュー。当時大野さんはメディアに「オヤジを超え、世界に通用するアーティストが目標。オヤジというでかい山を越えたい」と尊敬を込め話し、北島が「乗り越えられないでしょう」と笑顔で話す光景もあった。

 アルバムを2枚発売し解散し大地土子(だいち・とこ)のペンネームで作詞、作曲家として活動開始。98年発表の「詠人(うたびと)」はNHK・Eテレ「おじゃる丸」オープニング曲で、父・北島が歌唱した初のアニメ主題歌だった。

 北島は会見で「わが子でありながら、こんなセンスのあるやつかなと。いろんなことを教えてもらうことがあった」と音楽の豊かな才能を認めた。原田悠里ら“北島ファミリー”にも数多くの楽曲を提供してきた。ファミリーの楽曲著作権を管理する「北島音楽出版」の役員も務めた。北島は「まだ未発表のものもある。あいつに私がしてあげられるのは…残してくれたもの(曲)を世に出してあげたい」とふりしぼった。

 涙をこぼし「正直言って、寂しいし、つらい。やるせない。いつも思ってるからお前も忘れないでね」と天国に呼び掛け「子どもに先立たれるつらさを、身に染みて感じました」。検視などもあり北島は6日、遺体と対面した。通夜は7日に営まれ、告別式は今日8日に執り行われる。いずれも家族葬。後日、しのぶ会を行う予定という。