歌舞伎俳優尾上菊之助(40)が東京・国立劇場「梅雨小袖昔八丈」で、初役の髪結新三に挑んでいる。菊之助が魅力を存分に発揮している演目だった。

 新三は、憎めない小悪党。威勢が良くてかっこいいが、何のためらいもなく良家の娘と番頭をだまして金をせしめようとしたり、一方で大家にめっぽう弱かったりと、人間の多面性を見せなくてはならない難役。手際よく髪結いをする場面もある。

 人間国宝で、父尾上菊五郎の当たり役だ。かなりのプレッシャーを感じたと想像する。公演前は「5代目菊五郎が初演し、6代目が練り上げ、7代目の父菊五郎が熟成した狂言。最高にかっこいい男じゃないといけない。とても苦労していますが、楽しんでいます」と話していた。

 子分を1人抱えた程度ながら、町の顔役にたんかを切る新三に胸がすくし、その子分をかわいがっている加減がほほえましい。菊之助の美しい顔立ちががらりと変わって、すごみが走ると、さえざえとした怖さを感じた。

 近年、骨太の立役にもどんどん挑んでいる菊之助。菊之助の新三初役、見ておくべきだと思う。

 長男和史君も出演している。元気いっぱいの演技で沸かせている。27日まで。