慶大卒→フジテレビ入社→Youtuberに転身→現在はアイドル、という異色の経歴をもつ三原慧悟監督(28)の商業映画デビュー作「台湾より愛をこめて」が、24日に公開初日を迎える。

 主演はNHK連続テレビ小説「わろてんか」の好演が光る大野拓朗(29)。憧れの女の子を追いかけて台湾を旅する、さわやかな青春ロードムービーだ。

 メガホンをとった三原監督は、慶大理工学部を卒業後、新卒でフジテレビに入社。1年目で某ドラマの脚本、監督、編集を一任されるなど、超エリートコースを順調に歩んできた。しかし入社2年半で“脱サラ”し、Youtuberに転身した。

 一体何があったのか。

 大学時代は演劇サークルに所属していた。自ら発案して映画にも手を伸ばし、15本ほどの学生映画を撮った。TOHOシネマズ学生映画祭でグランプリを受賞、東京学生映画祭では観客賞を受賞するなど、多方面からの評価を獲得した。卒業後はフジテレビに入社し、大好きな映像制作を仕事にしていた。

 はたから見れば、順風満帆な人生。しかし満足していなかった。

 学生時代から「人と違う映画を作りたい」と思っていた。好きな映画を好きなように作れた学生時代、何より面白いと思ったのは、自らの実体験をもとに作った映画だった。「めちゃくちゃ面白い実体験、映画みたいなストーリーを、そのまま映画化したらどうか」。その思いで、会社に「フジテレビ社員がYoutuberになり、台湾で有名人になる、という実体験を映画化したい」と企画書を提出した。しかし会社はそんなに甘くなかった。

 一方で、入社1年目で単発の深夜ドラマを任されるなど、会社からの信頼は厚かった。脚本、監督、編集を1人で担ったが、学生時代からの蓄積もあり、ドラマを撮ること自体は難しいものではなかった。それでも納得はいかなかった。「実力があると思って、自信をもって会社に入って、テレビでやってるようなドラマを撮る自信はあったけど、それ以上のドラマを作れる自信がなかった。深夜ドラマを撮ったとき、特にそれを痛感した。『撮れるけど、他の人と違うことできてねえな』って思ったんです。同じことしてるだけじゃダメだな、自分にしかできないことやらなきゃダメだな、って。決まったとおりに撮るんじゃなくて、新しいことを生み出したいと思ったんです」

 一念発起し、企画を1人で進めていくと決めた。まずはフジテレビに在籍しながら休日を利用してYoutuber活動を始めた。台湾に向けた動画を制作し、Youtubeに公開した。「日本語おぼえうた」などのお役立ち動画や音楽ものから、「台湾から来たふりをしてみたら、日本人は優しくしてくれるのかやってみた」といった実験バラエティーものまで、ジャンルはさまざま。これがヒットした。1年ほど経った後、思い切ってフジテレビを退社した。

 それから2年。今は、Youtubeチャンネル登録者50万人を抱える人気者になった。台湾では街を歩けば声を掛けられる。日本にいても、旅行で来日している台湾人から声をかけられるという。夢の実現に向けて、順調にステップを重ねている。

 今後の目標は、アイドルとしてキャパ約15000人の台北アリーナを満員にすること。そして自分の半生を映画にすることだという。今作「台湾より愛をこめて」では、商業映画監督デビューという形で夢への第1歩を踏み出した。

 映画化する時は、企画書をフジテレビの映画部に持っていくつもりだ。「台湾では、もう知名度はついているので、それまでに日本でも知名度を付けて、日台で同時公開。それが日台の友好につながれば」。

 まだまだ夢の途中。その先に、どんなゴールが待ち受けているのだろうか。