アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニング曲「残酷な天使のテーゼ」や、Wink「淋しい熱帯魚」などを手掛けた作詞家の及川眠子さんが、物議をかもしているロックバンドRADWIMPSの新曲「HINOMARU」の歌詞について「いい歌じゃん」と高く評価し、「これの何があかんの?」と批判の声に疑問を呈した。

 同楽曲は「この身体に流れゆくは 気高きこの御国のみ霊」「さぁいざゆかん 日出づる国の御名の下に」などといった歌詞やタイトルから「愛国ソング」としてネット上で賛否を呼び、ボーカルの野田洋次郎が11日にツイッターで謝罪した。

 及川さんは15日、ツイッターで「RADWIMPS『HINOMARU』を聴いた。いい歌じゃん。これの何があかんの? この詞は『命』について歌ってると感じたけどなぁ」と感想を述べ、「左とか右とか、そういう思想で簡単に縛ってバッシングする。アーティストから言葉を奪うな、と私は思う」とつづった。

 自身もかつて靖国神社をテーマにした詞や反権力的な詞を書いたことがあるとし、「なぜそのテーマを選ぶのか。それは『命』を描きたいからだ。いろんなケースでの命を捉えたいのだ」と理由を説明。「生きるとか死ぬとかにずっと私はこだわってきた。人の命をリスペクトできない人間に物を書く資格はないとさえ思ってる」と作詞家としての姿勢をつづった。

 今回の騒動を受け、「なんだか世の中が、アーティストや物書きは思想を持つなというような雰囲気になってきてるなぁ」と及川さん。「バッシングを恐れて、口当たりのいいスイーツみたいな歌や小説に転がる人たちもいて、それはそれで構わないと思う。でも私は、それこそ殺されるんじゃないかってくらいの毒のある歌や文章に触れていたい」と私見を述べた。

 続けて「30年以上作詞家やっているとよくわかる。本当にだんだんと言葉に対しての『取り締まり』みたいなのがキツくなってるのよ。いやいやそれは想像しすぎでしょ、ということを先回りして取り締まってくれるし。もちろん評論する自由もあり。ただ、なんかねぇ...集団リンチ的なバッシングになっちゃうことがイヤなだけ。言いたいことを言える世の中がいちばんいいに決まってるし。愛国を歌って何が悪いと思うし、歌に奥行きなくてどこがいけない、とも思います」と、表現の自由が侵されることを危惧。野田については「私は野田洋次郎くんの書くものが好き。こいつ天才だわクソがぁ悔しいと思えて自分の励みにもなる(笑)」と才能を称賛した。