桂歌丸さんの告別式が営まれた横浜・妙蓮寺には、生前の歌丸さんがしのばれる品々を展示した部屋が設けられていた。中には趣味の渓流釣り用のさおもあった。

 歌丸さんの釣り好きを知ったのは、ご本人の話ではなく、01年に亡くなった古今亭志ん朝さんのまくらだった。どこかの落語会で、志ん朝さんと歌丸さんが出演していた。今考えれば、おそろしくぜいたくだ。志ん朝さんが「歌丸さんはイワナ釣りが好きで…」というような話をして、へえ、そうなのかと思った記憶がある。その後発売された志ん朝さんの音源を聞くと「イワナ釣りが好きで、歌丸さんもイワナみたいな顔になっちゃった」とイジって笑わせている。

 辛抱が必要とされる渓流釣りを歌丸さんは楽しんだ。年を取って、実際に行くことはなくなったが、思い出をよく話していたという。

 さおはたくさん所有していたそう。歌丸さんが眠るかたわらに、そっと寄り添うように納められた。天国で渓流釣りを楽しむのだろう。しかし、さおがたくさんありすぎて、歌丸さん以外の人にはどれが何で、どのさおに価値があるのかがさっぱり分からなかったとのこと。5代目古今亭今輔さん門下で兄弟子だった三遊亭円右さんからもらった、ものすごく高価なさおもあるという。家族、関係者が検討、吟味して納めたかたわらのさおを見て、歌丸さんは何と言っているだろうか。