ミュージシャン内田裕也(78)が14日、京都市内で映画「転がる魂・内田裕也 ザ・ノンフィクション」(崔洋一監督)の舞台あいさつに登壇し、先月15日に亡くなった妻で女優の樹木希林さん(享年75)について思いを語った。

今年で第5回を迎えた開催中の「京都国際映画祭」内の特別企画。内田は第1回から企画に参加。この映画は、17年のニューイヤーズワールドロックフェスティバルに取り組む内田の1年に、40年来の知人である崔監督(69)が密着したもの。今夏にフジテレビ系「ザ・ノンフィクション」枠で放送された内容をもとに制作され、ナレーションを希林さんが務めた。

全身黒の正装につえを持ってハットを被り、赤い靴下姿の内田は車いすに乗って登場。かすれ声で「声が出にくい状態で、頑張って最後までやりたいと思いまして。まー、一杯飲んだら治るんだと思うんで」といきなり裕也節であいさつした。

舞台あいさつ前の上映を劇場後方の席で崔監督と見ていた内田は「監督もオレも十分楽しめたと思います」。劇中では、内田の勇姿に混じり、ナレーションを入れる希林さんも登場する。映画版はこの日初めて見たという内田は言葉をためて、「先日、他界した(妻の)樹木希林さんが出てたのでちょっと動揺しましたが、一緒にスクリーンに出られてうれしかったです。ありがとう」と思いを語った。

MCから今後の音楽活動の構想を聞かれた際には、「オレはそんなのベラベラしゃべらないから」。隣の崔監督は「これが裕也節です」と会場を笑わせた。今年7月に希林さんが撮影を行った後には、自分の病状を分かった上で「崔さん、私の最後のナレーションよ」と話していたとも崔監督は明かした。

改めて映画について内田は「とても面白かったという感想が第一です。いろんな古い友人とか出てきて、僕はあまりメジャーで成功したことがなかったんで、とても感無量で見させていただきました。これはまた、今後のオレのロックンロールライフにとても大きなパワーとなってつながるという風に確信してます」と力強く語った。「自分のポリシーと夢を曲げないでやり続けたい」とこれからの活動にも意欲的に話した。

希林さんが亡くなってから今回が2回目の公の場。多くの報道陣が詰めかけたが、内田の左胸には「KEEP CALM AND CARRY ON」(平静を保ち、普段の生活を続けよ)という意味の赤い缶バッジが付けられていた。細部まで、裕也節が垣間見られた。