来年4月28日付での退団を発表した宝塚歌劇団の花組トップ娘役、仙名彩世(せんな・あやせ)が16日、兵庫・宝塚市内の同歌劇団で退団会見を開き、決意について「就任時から意識していた」と明かした。

娘役としては異例、新人ヒロイン経験もなく、9年目の遅咲きでの就任だった。花組トップ明日海(あすみ)りおの3人目相手役に迎えられ、持ち前の歌、芝居、ダンスと3拍子そろった技量を発揮してきた。

当初から退団への覚悟をもっており「ジワジワと心の中で(退団への意識が)動いておりました。納得できる時期が来たら(退団)かなと思っていました」。明確なきっかけとなった作品、役柄はないものの、昨年2月の就任から本拠地4作で退くことを決めた。

明日海には、今年1月の「ポーの一族」公演時に相談をしたといい「自分で決めたことなら」と支持。「集大成として一緒によい舞台を作っていきましょうと言っていただきました」と感謝した。

組メンバーには、2日前に伝え「最後まで学べることはすべて学ばせていただきます」と言われた。月組トップの珠城(たまき)りょうとは同期。珠城からは「今までがんばったね。お疲れさま」とねぎらわれたという。

10年で一人前とされる男役に比べ、娘役は出世が早いのが宝塚の通例だ。就任までに悪役もこなし、トップに就いた後も、既存の宝塚のヒロイン像とは一線を画し、明日海とともに新たなトップコンビ像を提示した。

「若手時代からいろんな役をさせていただき、思っていたことは、今この舞台、宝塚の舞台に娘役として立てていることがどれだけ幸せなことか、と。娘役でいられる幸せをいつも忘れないようにしてきました」

2年間、宝塚音楽学校で学んだ者しか入学できない同劇団。入団後もしばらくは定期的に試験があり、劇団員は「生徒」と呼ばれる。ある種、壮大な年月、規模を誇る“学校”の延長でもあるのが劇団だ。08年に首席入団した仙名は、いきなりスポットライトを浴びることはなくとも、地道に腕を磨き、9年かけてトップ娘役の座へ就いた。

「卒業を決めてから、振り返ってみると、うれしいことも、希望も、不安も、すべてを味わうことで成長してこられたと思います」

自らに「合う」と選んだ白いワンピース姿で、笑みを携え、話を続けた。退団後については「何も考えてないです」と話していた。

演技の幅の広さから、ヒロインの固定概念にとらわれず、劇団の新たなトップコンビ像を提示していた。

退団公演「CASANOVA」は、宝塚大劇場で来年2月8日~3月11日、東京宝塚劇場は同3月29日~4月28日。仙名は、同公演の東京千秋楽で退団する。