俳優宝田明(84)が、ミュージカルコメディー映画「ダンスウィズミー」(矢口史靖監督、来夏公開)で、55年ぶりにスクリーンで歌い、踊る。このほど東京近郊で行われた撮影で、日刊スポーツなどの取材に応じた。宝田が、映画でミュージカルシーンを見せるのは「ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば」(64年)以来となる。

宝田が演じたのは催眠術師のマーチン上田。三吉彩花(22)演じる主人公に、音楽を聞くと踊り出してしまう催眠術をかける役だ。

ミュージカルスターの草分け的存在の宝田は、オファーが来た時のことを「お、来たな。やってやろうと思いました」と振り返る。55年ぶりの感想を聞くと「シーラカンスかアンモナイトみたいだな」と笑った。

取材した日は撮了日でもあり、三吉とやしろ優(31)とのダンスシーンを撮っていた。「体に入っているリズムがある」と言うように、軽やかにステップを踏み、ターンした。コミカルさもありながら華麗さも失わない。動きのアイデアも積極的に出し、三吉とやしろとの写真撮影時にもポーズのアドバイスをした。

矢口監督は「真剣なのに軽快で、脂が抜けていなくてちょっとエッチ。こんな人はいない。想像以上でした」と驚いていた。

撮影を「楽しかった。気持ち良く踊れた」と話した宝田は「催眠術師を演じたのは初めて。私の引き出しの中にしまって、かぎをかけておいておくことはできる。この次の時に使えることはできるかな」と、次への意欲を見せた。

同作は7月24日にクランクインし、東京、新潟、函館などでオールロケで撮影された。ほかにchay、三浦貴大、ムロツヨシが出演する。【小林千穂】

◆宝田明(たからだ・あきら)1934年(昭9)4月29日生まれ。54年、第6期東宝ニューフェースとして、映画「かくて自由の鐘は鳴る」でデビュー。代表作は「ゴジラ」「青い山脈」など。音楽映画は「ロマンス娘」「太陽を抱け」など。64年、舞台「アニーよ銃をとれ」で、ブロードウェーミュージカルに出演、以後「サウンド・オブ・ミュージック」「風と共に去りぬ」「マイ・フェア・レディ」など多くの名作に出演。12年には制作、演出、出演のミュージカル「ファンタスティックス」で文化庁芸術祭賞大賞。