重要無形文化財保持者(人間国宝)で歌舞伎役者の片岡仁左衛門(74)が11日、京都市内で、今月1日に新開場した南座の年末恒例公演「吉例顔見世興行」(12月1~26日)の取材会に、共演の息子孝太郎(50)孫千之助(18)と出席した。

9月から、仁左衛門に手取り足取り、稽古をつけてもらっているという千之助は「何もかもを吸収したい」と意気込む。祖父仁左衛門の印象については「ヒーローみたいな(存在)」といい、小さい頃から好きだというウルトラマンを例に挙げ「ウルトラマンと同じにするのは別かもしれないですけど、それぐらいのヒーロー」と、無邪気に表現した。

千之助にとっては、それぐらい憧れの存在。それが祖父の仁左衛門だ。祖父のように「いつか自分もなれたら、近づけたら良いなっていう思いが強いです」とも話す。その様子を隣に座った仁左衛門は、一言一句を食い入る様に聞き入り、終始、ほおが緩みっぱなしで見守った。

仁左衛門が、そんな孫と、息子、親子3代で共演する師走の南座公演。南座は今月、やっと改修工事を終え、約2年9カ月ぶりに開場。現在、2カ月連続で興行が打たれている。今月の公演に出演している仁左衛門、孝太郎に加え、12月は千之助が出演し、約10年ぶりとなる松嶋屋3代そろい踏みとなる。

3世代共演については「本当にうれしい」と笑顔を見せた仁左衛門。孫千之助には「楽しみであり、心配」と祖父の顔ものぞかせた。

3人が同じ舞台に立つ夜の部「義経千本桜」では、千之助が難しい役所の主馬小金吾(しゅめのこきんご)を演じる。

孝太郎は「大きな役を息子が頂いて、父(仁左衛門)と一緒に同じ場面に出られるというのは、とても楽しみでもあり不安でもある」と本音を吐露。舞台経験の少ない孫の配役について仁左衛門は「ある意味では無謀なんですけど」と前置きしながらも「無理な荷物を背負わせないといけない」とその思いを告白。

役を重荷に例え「30キロしか持てない者に、60キロを挑戦させて持てなくても、次に挑戦した時の30キロは楽にはなる」と表現していた。